今年に入って著名人に成りすました投資詐欺が増えている。経済アナリストの森永康平さんは「今のところ、親父をかたった詐欺で6億円、僕をかたったもので3億円という大きな被害が出ている。被害者の方に話を聞いたところ、自分は引っかからないという自信があった人が引っかかっていることがわかった」という――。

「投資詐欺」激増の背景

投資に興味を持つ人や実際に始める人が増えています。それと同時に投資詐欺も増え、特に今年に入ってからは激増しています。詐欺師は世の中の空気を読むことに長けているので、新NISAが始まり投資人気が高まっている今の状況を「稼ぎどき」と考えているのだろうと思います。

経済アナリスト 森永康平さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
経済アナリスト 森永康平さん

特に新NISAを機に投資を始めた投資初心者は、詐欺師にとっては格好の標的です。今いちばん流行っているのは、インスタやFacebookに著名人の顔が入った広告を載せ、クリックした人をLINEのチャットグループに誘導する手口。チャットグループにはすでに100〜200人が会員として参加しているので、本物だと信じ込んでしまう人も多いのですが、実はそれらはほぼすべてがサクラです。

そこでは、著名人を名乗るアカウントが何かの銘柄を買うように勧め、サクラが「先生の指示の通りにしたら資産が倍になりました!」と持ち上げる、といったやりとりが繰り返されます。おかしいなと思っても、「本当に本人ですか?」などと聞くとサクラが「先生は無償で教えてくださっているのに失礼だろ!」とキレるんですよ。

「あなたには見込みがある」と1対1のやりとりへ

さらに最近は、その著名人を名乗るアカウントが、本人であると示すために運転免許証の画像をアップすることも。もちろん偽物なのですが、とてもきれいに偽造されているので素人目には本物にしか見えません。また、その著名人の声をAIに学習させてつくった、偽のボイスメッセージを送ってくる場合もあります。

詐欺師はこうした偽の証拠で本人だと信じ込ませた後、「あなたは見込みがあるから」とLINE上での1対1のやりとりに持ち込みます。そこで、絶対にもうかる案件があるからお金を振り込むようにと口座を指定され、振り込んだら連絡がとれなくなる──。今、この手口にだまされる人がものすごく多いんです。