鬼滅との決定的な違い

つまり「アニメ人気」で第1期から、2期「遊郭編」と3期「刀鍛冶の里編」でステージを変えた『鬼滅の刃』に比べると、「楽曲人気」の『マッシュル』は1期と2期でその固定ファンのボリュームを大きく変えたとは言えない、という結論になる。

『マッシュル』もそれぞれの時期でトップ3のアニメに入っているため基本的には人気アニメである。これはあくまで「楽曲ほどにアニメそのものはバズらなかった」というだけの結論である。

これが世界のアニメファンの『マッシュル』に対する反応である。

「BBBBダンス」がどれほど流行ろうとそこからアニメにユーザーが大量に流れ込んだという形跡はない。

ある意味アニメがアニメそのものとして正しく消費された結果といえ、マッシュルというキャラクターの「認知度」を上げることには貢献したが、それが単純に「人気度」につながるほどアニメファンは単純ではない、ということもいえるだろう。

『マッシュル』より人気だった『俺レべ』

実は「BBBBダンス」も『マッシュル』もその勢いがかすむような衝撃が、この1~3月には起こった。

アニメ『俺だけレベルアップな件(以後俺レべ)』はScore8.34で歴代224位、59万人のMembersという結果を残し、この3カ月61作品のなかでは断トツのトップ。この1年間に放送された250以上もの作品の中でもトップ5に入る人気度である。

葬送のフリーレン』『SPY×FAMILY』以上、『地獄楽』クラスで、『呪術』『鬼滅』『推しの子』には及ばない、というレベルアップぶりだった。

『俺レべ』は韓国発の作品で、原作・原案Chugong、作画DUBU(REDICE STUDIO)だ。2016~18年に韓国のウェブサイト「カカオページ」に小説として連載され、2018~22年にはウェブトゥーン版(マンガ)が連載開始された。全179話ある。

※ウェブトゥーンとは、韓国発のウェブコミックの一種。従来のマンガと異なり、上から下へと読み進められるよう、各コマが一つずつ縦に並ぶ単純なコマ割りを採用しているのが最大の特徴。

日本では、2019年から3年間ウェブトゥーン版の日本語翻訳が「ピッコマ」(カカオの日本法人である株式会社カカオジャパン発のサービス)で連載された。同作は日本にピッコマを根付かせ、Webtoonブームを牽引した。ピッコマの2023年の年間取引高1000億円突破の原動力となった大ヒット作品である。

連載当初から「Webtoonで一番売れているのは俺レべ」というほど評判は高く、続きが読みたい「時短ユーザー課金」で月2億円、年間では20億円以上稼ぎ、日本だけで6.5億Viewにもなったお化けWebtoonでもあった。

【図表2】アニメ配信後のMALのMenbersの動き
図表=筆者作成