「再エネ投資が進まない」のは理由がある

将来のことはよく分からないと思ったら、あまり大きな投資をしないで、現金を手元に置いておいた方がよい、というのは常識的な経済感覚を持つ経営者や普通の人々がする賢明な判断です。

単純な計算では、投資回収年数が短くて、一見するとすぐに元が取れそうな省エネ投資でも、現実にはあまり進まないというのは、それなりに合理的な理由がある場合が多いのです。

政府には、エネルギー効率が悪い粗悪品を市場から排除したり、エアコンなどの機器のエネルギー消費量の表示を義務付けたりすることで、消費者に情報提供をするといった役目はあります。

しかし、個人が何を買うべきかまでこまごまと指図するのは出しゃばり過ぎです。

政府の事業はよく失敗する

政府の事業はよく失敗します。これは決して政府の人間が無能だからだということではありません。政府が何か事業をするとなると、政治家が介入し、官僚機構が肥大し、規制を歪ませて利益誘導しようとする事業者が入り込むので、うまくいかないことが多いのです。これを経済学では「政府の失敗」と言います。

国会議事堂
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政府の事業はよく失敗する(※写真はイメージです)

「政府が民間より効率的に投資ができる」という発想は、計画経済そのものです。

北朝鮮と韓国と、どちらが経済成長したかに思いを馳せれば、この考え方の愚かしさが分かるでしょう。朝鮮戦争の直後に南北が分かれた時点では、むしろ北朝鮮の方が工業化は進んでいて、韓国の方が遅れていたのです。

ところが、今では大きく逆転しています。

韓国は先進国なみの経済水準に達したのに、北朝鮮は世界で最も貧しい水準です。

このように、環境省審議会の試算は前提のところですでに根本的に誤っています。

モデルの詳細は資料を見てもブラックボックスになっていてよく分かりません。というより、知る価値もありません。