前出の弁護士に言わせると、「身柄を取ったもん勝ち」。暴力団が老人の身柄を保護して「家族にDVを受けた」と言わせて裁判を起こし、親族から資産を根こそぎ巻き上げるケースもある。

「私もそうした相談を3件受けましたが、裁判はすべて劣勢。港区内のマンションを4棟やられた件もあります。法廷では一般人も暴力団員も扱いは変わりませんから……」(平塚氏)

平塚氏が最近よく相談を受けるのは、何と弁護士が首謀者となるケースとか。繰り返すが、プロが“その気”になれば素人が逃れるのは至難の業。弁護士の窮乏ぶりが顕著な今、彼らの道義心以外に歯止めのない現状は空恐ろしい。

類似ケースを挙げよう。資産約2億5000万円を持っていた70代後半の女性(当時、Aさんとする)。亡夫との間に子はない。都内で独り暮らしをしていたAさんの代わりに、この案件を担当した若手弁護士が取材に応じた。

「一度騙されて養子縁組したある男性の使い込みが判明した際、弁護士の夫と別れた50代(当時)女性が『そんな男とは離縁させてあげる』と言ってAさんに接近してきた」

2004年11月、気分の悪くなったAさんが救急車で搬送され、そのまま入院。「少しボケが入って」(同)一時的に判断能力が落ちた。

異変は直後から始まった。翌12月、女性とその娘2人の計3名とAさんとの間で養子縁組が成立した。

「翌年1月には、Aさんと女性との間で任意後見契約が結ばれている」(同)

5月には、Aさんの自宅取り壊しとマンション建築が決定。名義は女性の長女で、土地に抵当権も付いた。さらに都内の別の土地を3人に贈与。また別個の土地にあったAさんのアパートも同様に贈与……と、わずか1年足らずの間にAさん所有の不動産が次々とこの母娘の手に落ちてしまった。

「元夫の仲間の弁護士との共謀だったようです。入院中にこれだけやられて、Aさんは帰る家がなくなった。その後2年間で預貯金約8000万円が抜かれ、不動産約1億2000万円と合わせると、約2億円が女性親子の手中に入った計算になります」(同)