新NISAでは売却分の枠で再投資できるのは「翌年以降」

ビキナーズラックだと思いながらも、幸先の良い結果に気を良くしたAさんは、次はどこに投資しようかと、探した結果、同じくマグニフィセント・セブンの一角であるメタに決定し、早速、購入しようとネット証券のスマホアプリを開き、クリックしながら操作を進めるも、「決定」ボタンが押せず、進まない事態になってしまった。

よくよく調べてみると、新NISAでは保有資産を売却すると、売却した分の非課税投資枠にて再投資できるとある。しかし、再投資できるのは、保有資産を売却した翌年以降になる、という。

Aさん曰く「何それ、使えない」。3月初めの時点で早くも今年1年間の成長投資枠の半分が利用できないこととなってしまった。「基本的に売買するな、ということでしょうね」と嘆く。今年の相場のように年初早々から株価が急騰したことで早々と売却すると、そこから年末まで当該枠が使えず、NISAでの追加投資は終了ということになるのだ。

資産運用では長期的な計画も大事だが、マーケットの変化に応じて、同時に走りながらその都度考え即断即決する世界でもある。そうした一種の覚悟を持つことが投資を行う上での前提となってくる。そう考えると、期中で売買すると以降その枠は使えないNISAは、本来の投資のあり方と相性がよくないのだろう。

ビジネス街の電光掲示板に掲示されたストックボードとそれを眺める男性
写真=iStock.com/chachamal
※写真はイメージです

損益通算も繰越控除もできない

さらに不便なことに、仮に、NISA口座で保有する商品を売却して、売却損が生じた場合、特定口座にある他の商品の配当金や売買益等と損益通算ができないのだ。また、損失の繰越控除(3年間)もできないことになっている。

なぜなら、NISA口座では、配当金や売買益等は非課税となる一方で、これらの売却損は税務上ないものとみなされている、からだそうだ。

確かに、初めから損する前提で投資を始める人はいないと言われればその通りかもしれない。「頻繁な回転売買を避けるように設計されている」(大手証券会社役員)、「損切をためらわせ、長期保有するための仕組みなので」(銀行アナリスト)との声もある。いずれにせよ、現実には売却損は発生するものである。