儲かる会社をつくるにはどうすればいいのか。京都先端科学大学ビジネススクールの名和高司教授は「会社の存在意義を示す『パーパス』を効果的に活用すべきだ。ハーバード・ビジネススクールの研究によると、企業のミドル層がパーパスを繰り返し口にしている企業は収益性が高い」という――。

※本稿は、名和高司『パーパス経営入門』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

ハーバード・ビジネススクール
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なぜパーパスは「浸透」しないのか

あなたの会社にもひょっとして、作ったはいいが誰からも顧みられないパーパスやミッション、ビジョン、社是といったものがあるのではないでしょうか。

私はそれを「額縁パーパス」と呼んでいます。頑張ってパーパスを作ったはいいが、そこで力尽きてしまう企業は意外と多いのです。

より重要なのは、パーパスをいかに浸透させるか。しかし、これがなかなか難しい。

2021年、あるパーパス経営のセミナー(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー マネジメントフォーラム)の際に、参加者へのアンケートを行ったことがあります。

「明確なパーパス(企業の存在意義)やパーパス・ステートメントが明文化されているか」という質問に対して「はい」と答えた人が全体の約4分の3を占め、パーパスそのものは多くの会社に存在していることがわかりました。

一方、「パーパス経営を行う上で抱えている課題を教えてください」という問いに対しては、約40パーセントの人が「従業員への浸透が進まない」と答えており、回答率としてはこれが一番高かったのです。

多くの企業が「パーパスを作ったはいいが、浸透していない」という問題を抱えているということがよくわかる結果でした。

「額縁パーパス」を生み出す3つの要因

パーパスを掲げてもうまく実践できない企業の共通点は次の三つに集約できるでしょう。

1.「社会課題病」に陥っている
2.「中期計画病」に侵かされている
3.「自前主義病」を抱えている

1.の「社会課題病」は、今、日本企業の多くが陥っているものです。SDGsなどを参考に社会や地球の持続可能性という大きすぎる理想を掲げた結果、社員にとってはまったく現実味のないパーパスになってしまうということです。

2.の「中期計画病」については、日本企業の多くが、3年から5年先のいわゆる「中期計画」をゴールとして経営を行っています。しかし、3~5年という時間軸では、今の延長上でしか答えを求めることができません。そのためパーパスが、よく言えば現実的、悪く言えば夢のないものになってしまうのです。

そうではなく、パーパスを策定するにあたっては、30年先、50年先の自社の未来を見据える必要があります。