ネイティブから見た日本の英語教育の不思議

もう一つ、学校教育で不思議なのは、習う発音と単語があべこべだということです。

たとえば、「働く」という意味の「work」と「歩く」という意味の「walk」。日本人は「work」のことを「ワーク」と発音し、「walk」のことを「ウォーク」と言います。実は両方ともイギリス訛りの発音に近い発音になります。北米の英語ネイティブはどちらかというと反対の発音で話します。つまり、「work」のことをカタカナにすると「ウォーァッ」(※どちらかと言えばウォークに近い発音)、「walk」のことを「ウァーッ」(※どちらかと言えばワークに近い発音)と発音するのです。

発音はイギリス訛りの発音を学びますので、もしかしてイギリス英語の方が聞き取りやすいと感じる日本人もいるかもしれません。その代わり、アメリカ英語の海外ドラマが全く聞き取れないのです。

このように発音はイギリス英語寄りなのに、単語はアメリカ英語寄りです。たとえば、「アパート」のことをイギリスでは「flat」と言いますが、アメリカでは「apartment」と言います。他にも、「エレベーター」のことをイギリスで「lift」と言いますが、アメリカでは「elevator」です。食べ物ですと、「ポテトチップス」のことをイギリスでは「crisps」と言いますが、アメリカでは「potato chips」または「chips」と表現します。

なぜこうなったのか不思議ですが、きちんと統一してほしいものです。

アメリカとイギリスの国旗
写真=iStock.com/atakan
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ネイティブには伝わらない「外来語」「和製英語」

学校教育に加えて、日本人が英語下手になる「呪い」といえるような存在が、日本語の中でたくさん使われている外来語や和製英語の存在です。

外来語は日本人が英語などの外国語をカタカナ化したものです。私は聞こえるままをカタカナ化して発音練習をする「カタカナ英会話」という方法を編み出し推奨していますが、重要なのはネイティブの発音をそのままにカタカナ化するということです。しかし、日本で使われているカタカナ化はネイティブの発音を反映していません。

たとえば、「white」は「ホワイト」とカタカナ化しています。しかし、実際のネイティブの発音は、「ワイトゥ」あるいはそれもはしょって「ワイッ」というのがほとんどです。「what」も『ホワッツ マイケル?』(講談社)というマンガがありましたように「ホワッツ」と書きますが、これは誤りです。ネイティブは、「ワットゥ」と発音したり、続く単語によっては「ワッ」だけの場合もあります。どうして「ホ」がつくのか、謎です。

外来語にはこうした日本語訛りの英語をカタカナ化したものだけでなく、他の言語の訛りになってしまっている単語も存在します。

たとえば、「エネルギー」はドイツ語訛りの英語です。実際はドイツ語でも「エナギー」に近い発音ですが、英語ネイティブでは「エヌジー」と言います。「ウイルス」はラテン語で「毒素」を意味する言葉で、ラテン語由来の発音です。英語ネイティブでは「ヴァイウス」と言います。

そして、挙げ句の果てには、そもそも単語が英語ではないというケースも多いのです。例えば、「ピーマン」はフランス語の「piment」由来で「ピーマン」または「とうがらし」という意味です。英語では「green pepper」「グイーン ペプー」と発音します。

さらに言いますと、単語は一応英語なのですが、日本語の意味と英語の意味が全く異なる和製英語もたくさんあります。有名なのは例えば、「コンセント」ですね。英語でも「consent」という単語がありますが、全く意味が違って「同意する」や「承諾する」という意味です。「コンセント」のことを英語では「outlet」(アウッレッ)と言います。駅の「ホーム」も英語では「form」ではなく「platform」(プラッフォーゥン)と言います。これを言う時には最後に唇を軽く閉じて音を出しましょう。