咳、のどの痛み、鼻づまり…風邪のようで違う

もともと上咽頭は、細菌やウイルスが侵入して増殖することにより、炎症を引き起こしやすい場所です。上咽頭に炎症が起こると、鼻水や咳、のどの痛み、つまり、風邪のような症状が現れます。こうした急性の上咽頭炎であれば、抗生剤や消炎剤などで治療できますし、少し経てば自然に治ることが多いものです。

ところが、なんらかの理由によって、上咽頭の炎症が慢性化した状態になってしまうことがあります。これを「慢性上咽頭炎」と呼びます。

慢性上咽頭炎は「ウイルスや細菌などの感染」と「環境や生活習慣、ストレスなど感染以外の原因」という二つが影響しあって起こると私は考えています。

慢性上咽頭炎でも、しつこく続く咳、のどの痛み、鼻づまり、頭痛など、急性の上咽頭炎(風邪)と似た症状が現れるのが典型的です。しかし、急性の上咽頭炎とは違い、抗生剤や消炎剤が効かないという特徴があります。

しかも、さらなる大きな問題が生じます。それは、この慢性的な炎症が病巣びょうそうとなって、体の離れた場所にまで、さまざまな病気や不調をもたらすということです。

「のどの違和感」を感じていないか

なぜ、鼻の奥にある上咽頭の炎症が全身に不調をもたらす原因となるのか? そのメカニズムについては本書で詳しく説明しています。

ここで強調しておきたいのは、慢性上咽頭炎を治療することにより、関連する症状が劇的に改善していくということです。病院に行っても原因不明だったり、治療を受けてもいっこうに効果がなかったりした症状が、慢性上咽頭炎の治療でウソのようによくなったケースが多くあります。

そもそも、慢性上咽頭炎は決して珍しい病気ではありません。程度の差はあれど、多くの人によく見られる病態(病的状態)です。例えば、読者の皆さんにも「のどがしじゅう痛い、違和感がある……」といった症状に身に覚えのある方がいらっしゃることでしょう。これは非常に高い確率で慢性上咽頭炎の可能性があります。