経営難の企業を助けたいのか、切り捨てたいのか

9日の記者会見で倪虹住宅相は、不動産バブル崩壊で経営悪化した不動産企業の破産をいとわない考えを示した。最近の中国政府の政策を見る限り、党中央の関係者がこうした見解を示すのは極めて異例だ。

これまで中国政府は、カントリー・ガーデンや恒大集団(エバーグランデ・グループ)など不動産企業、地方政府傘下の融資平台など、債務返済に行き詰まった企業の延命を優先してきた。

2020年8月の“3つのレッドライン”をきっかけに、中国の不動産バブルは崩壊した。その後、中国政府は、住宅購入の規制を一転して緩和した。融資規制強化の負の影響はあまりに強かった。住宅取得税の軽減や、家電などの購入補助券の配布を行う地方政府も現れた。

それでも目立った効果は出なかった。不動産業者の資金繰りを支援するために、政府は市中銀行に融資を増やすよう指示を強化し、不動産デベロッパーにマンションの完成を求めた。中国人民銀行(中央銀行)も政策金利を引き下げ、市中への流動性供給を強化したりした。

住宅購入者の不満をどうするつもりなのか

2024年1月、中国政府は“ホワイトリスト政策”と呼ばれる不動産支援策も実施した。地方政府などが金融支援を行う不動産事業を選定し、リストにまとめたものである。要は、ホワイトな案件(住むための住宅供給の社会的なニーズが高い開発案件)向けの支援を強化せよという号令だ。同月末、香港の高等法院(高裁に相当)はエバーグランデに清算を命じたが、多くの資産が存在する本土の当局が清算加速に動く兆しは出なかった。

中国政府の政策は、一貫して住宅購入者の不満を抑えることだ。予約販売によって未完成物件のローン返済を抱える家計の不満が高まれば、政治を優先する習政権の基盤が揺らぎかねない。

そうした中国政府の政策と、9日の住宅相の発言は矛盾する。倪虹氏は金融支援を継続する姿勢を示しつつも、不動産企業に厳しい対応をとる考えを示した。前触れのない政策方針の転換に、耳を疑う中国経済の専門家は増えた。