タイの物価は確実に上昇している

私は2023年と2024年の2年間連続でタイに長期滞在したが、物価は確実に上がっている。去年、アイリッシュパブでタイガービール(シンガポール)の1パイントを頼むと、ハッピーアワーは90バーツだった。が、今年は110バーツに値上がりしていた。

食事にしても、サービス料が取られるような店で一人あたりビール2本ほど飲むと、2人分の支払いが6000~8000円になるなんて当たり前。これでは日本とあまり変わらない。ホテルの料金も10%ほどは上がった印象だ。

寺など観光施設の料金も高騰が激しい。寝釈迦で知られるワット・ポーの拝観料は、2006年ごろは100バーツだったが、昨年には200バーツに上がっていた。さらに、2024年1月1日からは300バーツになった。ちなみにタイ人は無料である。

また「暁の寺」としても知られるワットアルンについては、チャオプラヤー川を渡るための船代がかつて2バーツだったところ、4バーツ、5バーツと値上がりが続き、先日訪れた際には10バーツになっていた。加えて、以前はワットアルンの近くに行くだけなら入場無料だったのだが、現在は船から降りるときに一律で100バーツを徴収されるようになっている。

バンコクで過ごす中川淳一郎夫妻
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バンコクで過ごす中川淳一郎夫妻

バンコクのOLは20年前の日本で見かけたような雰囲気

こうしたカネを欧米人は抵抗なく支払っている。だが、もともとタイを含めた東南アジアを「物価がとにかく安く、気軽に楽しめる国々」と捉え、最大の魅力はリーズナブルさだと思っていた日本人からすると、もはや高級な旅行先である。寺の拝観料が「タイ人は無料/外国人は有料」といった差だけでなく、「タイ人が中心の飲食店」と「外国人も多い飲食店」などでも激しい価格差が目に付くようになった。

そして、若干の敗北感すらおぼえてしまうのが、昨年や今年のタイ滞在で透けて見えてきたタイの人々のフトコロ事情だ。明らかにタイ人の懐も潤っていると、日々感じていた。たとえば、オフィスビルに入っているスターバックスをはじめとしたコーヒーチェーンで、フラペチーノなどを平然と買う20~30代OLの姿を頻繁に目にする。そうしたドリンク類は500~800円ほどで、モノによっては日本よりも高い。

現状、タイの給与水準は日本よりも低いのだが、人々の暮らしぶりや街が放つ雰囲気は活気に満ちあふれている。人々は海外ハイブランドの商品を手にするのがステータスと感じているのか、それらを携えてエレベーターに乗り、颯爽とオフィスに入っていく。

2000年代前半あたりによく見かけた日本のOLのような気合の入れ方というか、仕事もプライベートもスマートにこなす、トレンディなワーキングウーマン的世界観がタイのOLたちにも広まっている。夜になれば、ビールが1杯1000円するような高級店にも彼女たちは臆することなく入店し、仲間とディナーを楽しむ(それほど酒は飲まないが、料理もそこそこの値段はする)。