コレステロールを控えるのは無意味

もちろん、何らかの食べ方でコレステロールに若干の(10mg/dl程度)影響があることは報告されています(私が高コレステロール血症の患者さんに、くるみやナッツや大豆を積極的に摂取するようお勧めするのはそうしたデータがあるからです。そして、ロカボ指導によっても、やはり数mg/dlのコレステロール値の改善が生じることを論文で報告しています)。

ただ、いずれの方法であっても食事によるコレステロールへの介入で数年以上にわたって十分に高コレステロール血症を改善できたという無作為比較試験は存在せず、さらには、心臓病や脳卒中を予防できたという論文も存在しません。

要は短期的で表面的な効果しか確認されていないのです。しかも、高コレステロール血症の際に下げたいコレステロールのレベルは50mg/dl以上であり、実は、それは薬物療法で比較的簡単に達成できます。しかも、こうした薬物療法(スタチン剤と呼ばれる薬剤です)では、心臓病などの動脈硬化症の予防効果が多くの無作為比較試験で確認されています。

ちなみに、卵を普通に食べる群と卵の黄身を除外して食べる群を比較した無作為比較試験の結果では、両群の結果のほとんどに差異はなかったのですが、全卵を食べている群のほうが糖代謝が良かったと報告されています。繰り返しになりますが、食べるコレステロールを控えることは、血中コレステロールの低下や動脈硬化症の予防には無意味とお考えください。

腹持ちをよくしたいなら米より「お肉とバター」

一方、お米を食べないと腹持ちが悪いと刷り込まれている方もいらっしゃるようです。しかし、科学的に腹持ちがよいとわかっているのはお肉やバターを食べることなのです。

脂質やたんぱく質をしっかり食べると、消化管ホルモンの「グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)」、「ペプチドYY(PYY)」などの分泌が高まり、満腹中枢が刺激され、「お腹いっぱいでもう食べられない!」となります。脂質摂取比率を高くしても、カロリーオーバーになって太るというのは極めて難しいことなのです。

また、たんぱく質と脂質は、空腹感をもたらすホルモンである「グレリン」の分泌を長く抑制するので、満腹感が長続きします。逆に糖質はグレリンを抑える作用が弱いので、お腹いっぱい食べても、小腹が空きやすいです。

ダイエット中、過食と余計な間食を防ぎたいなら、脂質をカットするより、しっかり食べたほうがいいわけです。

焼肉
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