高齢者の住む場所がなくなってしまう

病死も、新しい入居者から「前もって知っていたら借りなかったのに」というクレームが来ないよう、家主側は告知しています。しかし、告知したらしたで、次の入居者を確保できなかったり、賃料を下げざるを得なかったりして資産価値低下につながっています。

結局のところ、入居者が孤独死すると家主側の負担が非常に大きくなります。そのため、入居者確保が少々困難になったとしても、事故物件化を防ぐために高齢者に貸すのを避けるしか方法がないのです。

しかし、このような現状は家主にとっても、賃貸を借りたい高齢者にとっても不幸な事態です。人は生きている限り、どこかに住まなければなりませんし、生きている人は誰しも必ずいつか死を迎えます。人が亡くなった場所をすべて事故物件化していたら、この日本に高齢者の住む場所はどこにもなくなってしまいます。

高齢者の増加によって死亡者数が増え、人口が減少していく「多死社会」もすぐそこまで来ています。今後は『死』に対する認識を、日本人は変えていく必要があると私は考えています。

住宅街の空撮
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60代のうちに「終の棲家」のめどをつけよう

60代になると定年を迎えて定期収入がなくなったり減ったり、ローンも組みにくくなり、一気に選択肢が狭まってきます。住むところを見つけるなら、賃貸にしても持ち家にしても収入の安定している60代でどれだけ準備できるかが勝負になります。

物件価格が高騰し続けている東京都で、余裕をもって家を買える人はほんの一握りです。そうなると賃貸を選ぶ人も多くなり、気軽に住み始められることから、今後はますます高齢者の住宅問題が増えてくるでしょう。

ただ高齢者になってからも簡単に部屋を借りられるようになるとは思えないので、賃貸物件を検討している人は早めの備えが必要です。

具体的には賃貸に長年住んでいる人も、老後は持ち家を売って賃貸に移ろうと考えている人も、60代後半までには自分の荷物や財産を整理して、これくらいの賃貸なら100歳まで生きても払い続けられると思える「終の棲家」を見つけ、早めに引っ越しておくことが大事です。

60代のうちであれば、年齢だけを理由に入居を断られることはまだないでしょう。家賃保証会社の加入で、身内の連帯保証人まで求められることも少ないはずです。そうして一度入居しておけば、トラブルを起こさない限り、住み続けることができます。持ち家と違って、備品が故障した場合には家主側が修繕してくれる点も安心です。