人生の最期に後悔しないためには、どうしたらいいのか。4000人の患者を看取ったホスピス医の小澤竹俊さんは「悩みや苦しみを抱えたとき、私たちはどうすればいいのか。その問いに対する答えは『ニーバーの祈り』の中にある」という――。

※本稿は、小澤竹俊『自分を否定しない習慣』(アスコム)の一部を再編集したものです。

ベッドに腰かけくつろぐ男性
写真=iStock.com/pondsaksit
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苦しみには、解決できるものとできないものがある

ここからは、自分を否定する気持ちを手放すための4つのポイントのうちの三つ目、「変えられるものと変えられないものを見極め、変えられないものを無理に変えようとしないこと」についてお話しします。

老いや病気により、心や体が弱くなってしまった。
試験や仕事で望むような結果が出せなかった。
家族や友人、職場の人間関係がうまくいかない。
毎日がつまらなくて、何もしたいと思えない。

こうした悩みや苦しみを抱え、自分を否定してしまっている人は、少なくないでしょう。

生きている限り、人は苦しみと無縁ではいられません。

そして、多くの苦しみは、「こうありたい」「こうしたい」という希望と、それが叶わない現実との開きから生まれ、開きが大きければ大きいほど、苦しみや自分を否定する気持ちも大きくなります。冒頭に挙げた悩みも同様です。

いつまでも健康で美しくいたいのに、日々歳をとってしまう。
試験や仕事でいい結果を出したいのに、なかなか思うようにいかない。
周りの人と仲良くしたいのに、喧嘩をしたりいじめに遭ったりしてしまう。
毎日楽しく充実した暮らしをしたいのに、やる気が起きない。

いずれも、希望と現実の開きから生まれていることがおわかりいただけるのではないでしょうか。

希望と現実の開きを埋める

悩みや苦しみを抱えたとき、私たちはどうすればいいのか。その問いに対する答えは、ニーバーの祈りの中にあると、私は思います。

ニーバーの祈りは、アメリカの神学者、ラインホルド・ニーバー(1892~1971年)が考えたものだといわれており、「神よ、変えることのできないものを静穏に受け入れる力を与えてください。変えるべきものを変える勇気を、そして、変えられないものと変えるべきものを区別する賢さを与えてください」というものです。