2月4日に京都市長選、前橋市長選が行われ、いずれも立憲民主党が支援した候補が勝利した。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「立憲民主党は地方の首長選で容易に『与野党相乗り』をすべきでない段階に来ている。地方選で有権者に選択肢を示すことが、国政での党勢拡大にもつながる」という――。
立憲民主党大会で気勢をあげる泉健太代表(中央)ら=2024年2月4日午後、東京都港区
写真=時事通信フォト
立憲民主党大会で気勢をあげる泉健太代表(中央)ら=2024年2月4日午後、東京都港区

前橋市長選と京都市長選での異なる構図

2月4日、立憲民主党は党大会を開き、「次期衆院選で政権交代を目指す」という方針を3年ぶりに示した。そして多くのメディアは「政権交代」を見出しにとって、大きく報じた。この状況には隔世の感がある。

数カ月前なら、党大会の記事がこれほど大きく掲載されることもなかっただろう。自民党の裏金問題という「敵失による棚ぼた」感は否めないが、その批判を受け止める勢力として、野党第1党である立憲の認知度が上がってきたのも確かなようだ。

だが、今回の本題は党大会ではない。党大会の当日に行われた二つの府県庁所在地の市長選――前橋市長選と京都市長選である。立憲は二つの選挙でともに勝利したが、選挙の構図は全く異なる。

前橋市長選は、新人で元群馬県議の小川晶氏が、自民、公明両党が推薦した現職・山本龍氏の4選を阻み初当選した。小川氏は県議時代に立憲民主党系会派に所属したことがあり、選挙戦では同党のほか共産、国民民主、社民の各党の議員から支援を受けた。事実上の与野党対決を野党側が制したと言える。

新人5人の争いとなった京都市長選は、立憲のほか自民、公明、国民民主の各党が推薦した松井孝治氏が、共産党が支援した福山和人氏や元市議の村山祥栄氏らを破り初当選した。松井氏は元民主党参院議員で、鳩山政権で官房副長官を務めた人物。立憲が推薦を決めた松井氏に自民党などが乗り、結果として国政の与野党が「相乗り」して共産党候補と戦い、勝利した。

立憲が「相乗り」で稼いだポイント

SNSなどでは、京都市長選にことさらに着目し「立憲の与野党相乗り」を批判する向きがある。立憲が自民党に対立候補を擁立して勝利すれば、前橋市長選と合わせて自民党を「2敗」に追い込み、大きな打撃を与えられたはずだ。それなのに立憲は自民党にすり寄り、日本維新の会や国民民主党のような「ゆ党」と化した、というわけだ。

こういう主張も理解はできる。しかし、筆者はこの立場は取らない。この「相乗り」によって、立憲は今後自民党と政権を争う上で大きなポイントを稼いだ、とみるからだ。俗に言う「国政と地方選は違う」論をあえて脇に置き、「政権戦略」の観点から京都市長選を振り返りたい。