俳優の宮沢氷魚さんと黒島結菜さんの結婚で改めて事実婚が注目されている。日本では事実婚のカップルは夫婦全体の2〜3%とまだまだ少数派だが、若い世代を中心に変化が起きているようだ。なぜ彼ら・彼女らは事実婚を選択したのか。20年前に事実婚を選択したジャーナリストの浜田敬子さんがリポートする――。

「入籍をしない家族の形」を選んだ2人

俳優の宮沢氷魚さんと黒島結菜さんがパートナー関係にあり、第1子の出産後も入籍するつもりはないという考えを発表したというニュースを聞いて、「時代は変わった」と感じた人は私だけではないだろう。

私自身、20年前に今の夫と結婚をするときに事実婚を選択していることもあって、この数年、20代や30代の知り合いから「事実婚ってどうですか?」「何か不利益や不便はありますか?」と相談を受けることが増えているので、若い世代には法律婚を望まない人たちが少しずつ増えている感覚は持っていた。だが、こうして著名人が堂々と入籍をしない家族の形を公表するようになったことには、やはり時代の変化を感じる。

あらゆるものの名前を変更するしんどい作業

私は1度目の結婚で法律婚を選んだ。夫婦別姓が認められない日本では、結婚後は夫婦どちらかの姓を選ばなければならない。当時ジェンダーに関する知識も女性としての権利意識も乏しかった私は、世の中の大勢に流されるように深く考えず法律婚をし、夫の姓に変えた。1990年代半ばだったが、当時勤めていた朝日新聞社では旧姓の通称使用も既に可能だったので、何ら不便も不都合もないだろうと考えたことも大きい。

婚姻届
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だが、離婚を経て再婚することになったときに、私は迷わず事実婚を選んだ。結婚、離婚の時に銀行口座からクレジットカードの名義、運転免許証などあらゆるものの名前を変更しなければならない気の遠くなるような作業にほとほと嫌気がさしたからだ。そしてもう一つ大きかったのが、日常で2つの名前を使い分けるストレスの大きさだった。

現実として95%の夫婦が夫の姓を選んでいる現実では、この膨大で煩雑な作業を強いられるのはほぼ女性だ。なぜ女性だけがこれほどの煩わしさやストレスを体験しなくてはならないのか――私が事実婚を選択した背景には、こうした理不尽さに対する怒りもあった。