多くの小学生にとって人生初の受験。それが中学受験だ。第一志望校合格を目指す道は平坦ではない中、問題行動を起こしてしまう子供もいる。中学受験塾を主宰する矢野耕平さんは「例えば、カンニング行為。多くの子は目標校を見つけると自然に不正を働かなくなるが、根が深いケースもある」という――。

※本稿は、矢野耕平『ぼくのかんがえた「さいきょう」の中学受験』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。

湯島天神の絵馬
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塾の先生が怖くてたまらないと訴えるわが子

Q 子どもは小学校五年生ですが、塾の先生が怖くて行きたくないと最近言い始めました。自分が怒られるわけではないのですが、ほかの生徒さんが、たとえばお弁当を忘れたり、やるべきことをやっていなかったりすると、先生がクラス全体に大声で活を入れるようで、とてもストレスを感じてしまうようです。

強くなってほしいと思いつつ、相性が悪いのかと悩みます。転塾するにも勇気が要りますが、先生の顔をなるべく見ないように授業中過ごすという子どもの気持ちをどう受け止めたらいいでしょうか。

A クラス全員に活を入れたら、お子さんがストレスを感じてしまう……。集団授業の塾ではよく聞く話です。そして、恥ずかしながらわたしの塾でも同種のご相談が寄せられることが稀にあります。ご質問で言及されているように、この時期の転塾についてはリスクを伴います(もちろん、六年生からの転塾を機に成績を伸ばす子もなかにはいますが)。現時点でのお子さんの成績にさほど問題がなければ転塾は回避したほうが無難でしょう。

ここは親の出番だと思います。

塾を訪ねて、その先生なり校舎責任者なりにお子さんの様子を伝えるとともに、全体であっても大声で怒鳴ったりしないこと、特定の生徒を叱らなければならないときは別の場所にしてほしいことなどを率直に願い出てみてはいかがでしょうか。普通ならば、塾側は反省をして、事態は改善の方向に向かうはずです。

ただ、これはあまり考えたくないことなのですが、万が一、相手が納得できないような態度をとったり、お子さんに対して「逆ギレ」するようなふるまいをしたり……そんなことになってしまうのなら、すぐに転塾へと舵を切ることをお勧めします。そんな塾に大切なお子さんを任せるわけにはいきません。

最後に、もう一つの可能性について触れておきたいと思います。

お子さんが周囲の言動に「過剰反応」する傾向があるのではないかということです。いままでのことを思い出してみてください。学校の先生だったり、周りの友人であったり……。ちょっとした出来事でさえも、お子さんは「被害者」としてお父様やお母様に自らのストレスや困惑を訴えてきたことはないでしょうか。もしそのような言動がしばしば見られるならば要注意です。

もし、お子さんにその傾向が認められるのなら、ここは「塾の先生はみんなのことを思って本当は口にしたくない厳しいことを言っているのだから、あなたもしっかりそのことばを受け止めなさい」と毅然きぜんとした態度をとることが必要だと思います。お子さんの甘えを許さないこともときには大切です。だって、お子さんはこの先も集団や周囲とのつながりを持ち続けて生きていくのですし、その中で嫌なことや悲しい出来事に遭遇し、それらを自己解決していかねばならないのですから。