事実の羅列ではなく“ストーリー”を示す

暗記メインの面接練習に頼らずに、自分の経験と思いを伝えるにはどうしたらいいでしょうか。さまざまな方法がありますが、筆者はいままで実践してきたメソッドを「共感ストーリー」としてまとめています。

スタンフォード大学ビジネススクールの教授で行動学者のジェニファー・アーカーは、事実や数字の羅列で伝えるよりもストーリーで伝えるほうが22倍記憶に残りやすいという研究結果を発表しています。

たとえば、「1週間前の晩ご飯は何でしたか?」と聞かれても、すぐに答えられる人はそういないと思います。

ですが、「最近の自分の誕生日に誰と一緒に何を食べましたか?」という問いにはきっと、答えられるでしょう。家族や恋人、友達など大切な人たちと一緒の誕生パーティーや食事会。なかには仕事でひとり、会社で誕生日を迎えたという方もいらっしゃるかもしれません。

いずれにしてもそこには、あなたにとっての誕生日ストーリーがあります。だから、記憶に残っているのです。転職面接でも自分の物語、共感ストーリーを話して、ほかの転職志望者のなかで「記憶に残る人」になるために、自分の経験と思いを自分の言葉で話していきましょう。

説明をするビジネスウーマン
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自己理解が深まれば暗記は必要なくなる

といっても、転職面接で生かせる自分の経験や思いをパッと思い出すことは難しいかもしれません。こちらの9つの質問からあなたの経験や思いを引き出すヒントにしてください。

■自分の経験や感情を引き出す9つの質問
①失敗や挫折を乗り越えた経験は?
②やりがいや充実感があった経験は?
③怒りを感じた経験は?
④どんな言葉をかけられて嬉しかったのか?
⑤まったくの初心者で・初めて経験したことは?
⑥自分に影響を与えた人は?
⑦自分が大切にしている言葉は?
⑧会社やチームに何か影響、変化を与えた経験は?
⑨会社やチームで表彰など何か選ばれた経験は?

これらの経験にともなう感情が必ずあったはずです。嬉しい、楽しい、喜びといったポジティブな感情。そして、悲しい、寂しいといったネガティブな感情。ぜひ、思い出しながら書き出してみてください。

また、共感ストーリーは自分の過去、現在、未来を語ることでもあります。要するに共感ストーリーが語れるということは、自分の人生の点と点が一本の線となり、自分自身のことを把握しているということです。それは、自分の何を聞かれても、自信を持って答えられる状態であると言えます。

転職で選ばれる共感ストーリーを作ることは、緊張が和らぐのはもちろん、自己理解、自己分析にもつながります。丸暗記をして何度も面接練習をする必要はないのです。ただでさえ仕事で忙しい転職志望者にとっては、一石二鳥の必勝メソッドなのです。