成田空港の近くにある「ジンギスカンの名店」

その店は成田空港近くの町道の脇に、看板も暖簾もあげずに、ひっそりとたたずんでいた。

私がはるばる車を飛ばして目指したのは、この地にある「元祖ジンギスカン」をうたう「緬羊会館」という名店だった(※)。

※現在は閉店

その店は成田空港近くの町道の脇にひっそりと佇んでいた
写真=iStock.com/kawamura_lucy
その店は成田空港近くの町道の脇にひっそりと佇んでいた(※写真はイメージです)

「成田の海の家」とも呼ばれていて、年季の入った引き戸を開けると、そこに広がるのは砂場だった。

そして、無造作にジンギスカン鍋が設置されたテーブルが5つほど置かれている。

初めての人はギョッとするかもしれない。

「ジンギスカン発祥の地」は三里塚

台所で肉を切りながら、こっちを睨むように凝視するオヤジがいた。店を切り盛りする木村邦昭さん(79)だ。

ただお世辞にも、愛想がいいとは言えない。

頑固だが、ジンギスカンには人一倍、愛情がある。

「初めての人はびっくりするんだよ。砂の上でジンギスカンやるのって。けど、羊の脂が床に飛んでごらんよ。滑って危ないでしょ。砂だったら滑らないし、掃除をする手間も省ける。理にかなっているんですよ」

木村さんは、三里塚はジンギスカン発祥の地と言って譲らない。

実は、1875年、ここ成田市三里塚は、日本で初めて羊毛の自給自足を目的とした「下総牧羊場」が開設された地なのだ。