有名人の「年の差婚」に対してネガティブな反応があるのはなぜか。文筆家の御田寺圭さんは「年の差婚を強く批判するのは女性に多いが、近ごろでは男性も表立って年の差婚を肯定できなくなってきた。背景には“ある雰囲気”の醸成がある」という――。
新郎新婦
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「年の差婚」への「気持ち悪い」という感想

ここ最近の芸能界では「年の差婚」でしばしば盛り上がっていた。

ご存じの方も多いだろうが、昨年11月にはお笑いタレントのハライチ・岩井勇気氏とタレントの奥森皐月氏の結婚があり、今年1月に入ってからは「KinKi Kids」の堂本剛氏と、「ももいろクローバーZ」の百田夏菜子氏の結婚報告があった。SNS上でもなにかと「年の差婚」についての話題が絶えない年末年始となっていた。皆さんおめでとうございます。

しかしながら、私が観測するかぎり、「年の差婚」はひと昔前ほど好意的なムードでは見られておらず、とくに女性たちからのネガティブな反応が多く目立っていた。不快感や違和感を表明する声、あるいは言葉を選ばずにいえば「気持ち悪い(キモい)」といった刺々しい感想を吐露する人も少なくなかった。

とくにハライチ岩井氏の結婚に対しては、小児性犯罪者が子どもの警戒心を解くために行う“手なづけ”を意味する「グルーミング」という苛烈な表現でもって非難するなど、個人の感想の限度を超えた誹謗ひぼう中傷を行うような人さえ現れていた。インターネットの世論を見るかぎり、こうした過激な言動はとりわけ中年層の女性に多かったようだ。

「若い女に嫉妬しているから」の説明では不十分だ

そもそもいくら著名人とはいえ、他人の結婚に対してここまで講釈すること自体が異様に見える。「年の差婚」だろうが、結婚した当人たちとは縁のないテレビ画面やSNS越しで眺めるだけの人たちには直接的にはなんら関係のないことだからだ。これが強制的な児童婚や人身売買ならまだしも、適切な法的手続きのもと両者合意のもとで行われた婚姻である以上、外野がとやかく「倫理的な糾弾」をするような筋合いはないはずだ。

なぜ現代社会では、著名人の「年の差婚(=男性が年上で女性が年下のカップルに限る)」に対して、不道徳だとか不見識だとか非常識だとか、果ては性犯罪だとか物申したくなるような人が――とくに女性に多く――現れてしまうのか。

SNS上ではそれを「若い女に嫉妬しているから」と説明する向きがあるが、私はそれでは不十分であるように思えてならなかった。