高齢者ホーム

長所・短所を比較して
自分に合った選択を

高齢者向けの住まいは昨今、非常に多様になった。右図は、その主要なものを、自立段階から要支援・介護までの時系列を横軸、費用の高低を縦軸にして表したものだ。しかし、それぞれに入居対象や条件、サービスの様態、内容が微妙に異なり、わかりにくいのが実情だ。

おそらく多くの人は、自立的に生活できる段階から入居でき、生活の自由度が高く、健康面で困ったときに見守りや生活支援が受けられ、要介護状態になっても対応してもらえる住まいを望むだろう。

しかし、そのような要件を満たす住まいは、ごく限られている。前出のNPO法人シニアライフ情報センターの事務局長、池田敏史子さんによれば「自立生活者が入居できる介護付き有料老人ホームと、介護型施設を併設したケアハウスくらいのもの」だと言う。

「有料老人ホームは、費用が高額で誰もが利用できるわけではありません。介護型施設を併設したケアハウスは低額で利用できますが、数が少なく、虚弱高齢者向けの福祉施設なので、入居者が限られます」

最近、急増しているサービス付き高齢者向け住宅(サ付き)。これは、かつて高円賃、高優賃、高専賃と呼ばれた高齢者向けの賃貸住宅が統合されたもの(2011年10月)で、見守り・相談サービスがついた住まいとなっている。

しかし、健康管理は自分ですることになっており、24時間の見守り体制がある有料老人ホームとは違い、夜間に常駐する職員はいなくてもいいことになっている。また、食事、生活支援、介護などのサービスは、居住者が個別に外部の事業者と契約して利用することになるので、自宅で居宅サービスを受けるのとあまり変わりない。

しかも、池田さんによれば「サ付きは現状では、8割が要介護者向けの住宅となっているのが実態」とのこと。これは、有料老人ホームでも同じだ。つまり、現在増加している高齢者向けの住まいは介護型が主。自立的に生活できる段階からの住み替えとなると、選択肢はずっと狭まってしまう。

「高齢者向けの住まい選びは、それを前提に考えてください」と池田さんは忠告する。

居宅サービスをどう使えるか
シミュレーションが大切

さりとて、いずれは支援・介護が必要になる時期が来ることを思えば、手をこまねいてもいられない。実際に前述の「サ付き」でも、一部には有料老人ホームと同様に、一体的なサービスを提供できるようにしている事業者もある。

「要は、さまざまな住まい・施設を実際に見て比較し、自分なりにその長所・短所を見極めて判断することです」

一例として、池田さんが作成した有料老人ホームと「サ付き」の比較表をここにとりあげた(下図)。他の高齢者向け住まいについても、同じような項目で横並びに比較してみると、違いがわかりやすくなる。

ただし、実際には住まいのタイプや事業者、個々の施設により内容にはかなり差異があるので、不安ならば専門の相談機関に相談することをお勧めする。

「もうひとつ大切なことは、ある程度は自宅に住み続ける場合でも、要支援・介護となった場合を想定して、地域にどのような事業者があり、どのような居宅サービスが受けられるかを、費用もあわせ調べておくことです」

高齢者向けの住まいでは、特定施設の指定を受けた介護付有料老人ホームや、特別養護老人ホームなどの介護保険施設のほかは、原則、外部の居宅サービスを利用することになる。

つまり、必要なサービスを自分で組み立てることになるのは、自宅で生活支援を受ける場合と実質的には同じだ。何をどう使えるかをあらかじめ知っておくことが重要で、それが住み替えを検討する際の材料にもなる。

「手始めに、どれでもいいので身近な高齢者向けの住まいを見学してみてください」と池田さん。

「そこから見えてくるものがたくさんあるはずです」と言う。