田舎暮らし・海外移住

2地域・2カ国行き来する
暮らしや居住が定着か!?

シニアからの田舎暮らしには、根強い人気がある。シニアの移住を積極的に受け入れている地方自治体も多い。国内唯一の田舎暮らし月刊誌『いなか暮らしの本』(宝島社)編集長、柳順一さんによれば「そうした自治体への相談件数が、このところ増えている」という。同誌の読者も50~60代が半数を占める。

「田舎暮らしをしているシニアは、自然志向派というだけではなく、自分で生活を楽しむのが上手な方が多いですね。都市型の消費生活から自給的生活への転換。『お金を使う』のではなく『自分で生活をつくる』のを楽しめる方たちです」

田舎暮らしの1カ月の消費支出は、節約して10万円から15万円が目安だと柳さん。ただし、田舎に引っ越せば生活費がその額で済むのではなく、消費型生活から意識を切り替えることが大切だという。

最近の傾向で目につくのは、2地域居住の田舎暮らし。都市部の自宅のほかに地方に住まいを持ち、田舎暮らしに比重を置きながら、行き来するパターンだ。年齢を経て、健康に不安が出てきたときに、利便性の高い都市の自宅に戻ることを見越し、そうした選択をする人もいるようだ。

住まい探しには、同誌の物件情報(月約200件)をはじめ、Web上で提供されている地方不動産の物件情報が役立つ。また、地方自治体が物件情報を提供する「空き家バンク」もある。これは、家を買いたい人、借りたい人と持ち主をマッチングさせるシステムで、行政によるものだけに安心感があるといわれる。

ひところほど騒がれなくなったが、リタイア後に海外で生活したいという人も少なくない。Webサイト「海外移住情報」を運営している安田修さんによれば、こちらでも2地域ならぬ2カ国居住が目立つようになってきたという。

「海外にコンドミニアムを購入して拠点とし、使わないときは短期に貸し出す。収益を得ながら、日本と海外を行き来して生活するパターンです」

最近では先進国よりも、タイ、マレーシアなど親日的な東南アジアで、リタイアメント査証が使える国の人気が高い。リタイアメント査証は、主に年金を受給する退職者を対象にした「長期滞在査証」の通称。40カ国以上で制度化されている。

発給の条件は国によって違うが、通常の査証申請より手続きが簡略化され、取得しやすい場合が多い。

定住を前提とした制度ではあるが、定住を必須とはしていない国が多いので、2カ国居住に利用できる。

60代以降をアクティブに暮らしたいという人の田舎暮らしと、海外移住。いずれの場合も、現地に合わせて自分の生活のあり方を組み変える意識が必要だ。