100歳を目指すなら、老後の住まいのことは真剣に考えたい。自宅に住み続けられるのか、高齢者ホームを探すのか、田舎暮らしや海外移住という選択もある。ライフスタイルや健康状態などを考慮して、自分に合った憩いの住空間を見つけたい。

スモールライフへ切り替え
住生活を設計

老後を、できるだけ住み慣れた自宅で暮らしたいと思う人は多い。しかし、やがては介護・医療サービスに頼らざるを得ない時期が来る。それを前提に、60代からの住生活をどう組み立てるかは、大きな課題だ。

シニアライフ情報センターは20年来、高齢者向けホームや施設についての情報提供と相談に応じているNPO法人。事務局長の池田敏史子さんは、60代からの生活を3期に分けてとらえている。まず、自立期と要介護期。さらに自立期を、第1自立期と第2自立期に分ける。

「第1自立期は60代後半で、元気に生活できる年代。第2自立期は、70代前半からで、少し健康に不安を抱えながらも、日常の生活ができる段階です。住み替えは、この第2自立期の大きなテーマです」

自宅か、高齢者施設に移るか。経済的に余裕があれば、元気なうちから入居でき、終生暮らせる有料老人ホームが1番望ましい選択肢だろう。それ以外では、最近急増しているサービス付き高齢者向け住宅やケアハウスなど、さまざまな施設がある。

最期まで自宅でとなると、住まいが持ち家であることや、家族が同居しているか、近くに住んでいること、居住する地域に親しい友人や親族、ホームドクターがいるといった条件がそろわないと、なかなか暮らし続けるのは難しい。

「できるだけ自宅に長く住むとしても、いずれは住み替えが必要になると考えて、準備をしておいたほうがいいと思います」と池田さん。そこで提唱しているのが「スモールライフの勧め」だという。

スモールライフは池田さんの造語だが、文字通り住まいも含め、身軽な生活に切り替えようというものだ。子供を育てた家は、夫婦2人では広すぎて、むしろ維持管理が負担になっていないか、使わなくなった家財道具などをどう処分するかといったことである。それを住み替えでやろうというのだ。

「たとえば、一戸建ての自宅を売って中古マンションに住み替えると、居住スペースはおおむね半分以下になりますから、家財道具を大幅に減らせます」

ゆくゆく介護付きの施設などに移らなければならないとして、持ち込める荷物は、一戸建てに住んでいる場合の1~2割程度だという。ほとんどは、それ以前に処分しなければならないのだ。ならば、とりかかるのは早いほうがいい。

高齢者向け施設をどう選ぶか、どの時期に住み替えるかは、身体状況や資産、家族関係など、多くの要素が絡み、ケースバイケース。だが「実は、70代は大きな変動に見舞われる時期」と池田さん。

「健康不安ばかりではなく、大切な伴侶を亡くすこともありえます。そんなときのことも見越して将来設計を」と言う。

住み替えで、生活をコンパクトにすることから始め、自分に合った施設選びや高齢者向けサービスの利用法などを組み立てていく。「今から検討」が大切だ。