倍速視聴でコンテンツを消費して「オタクだと認識されたい」

(1)は、仕事や家事など、労力が求められるときに手間を省くなどして時間の効率化を図る側面を指す。

(2)は、モノやサービスを消費した際に、その消費対象から直接得た効用が、かけた時間に見合っていたかを評価する側面だ。英会話教室に月5万円払って、12カ月で英語が話せるようになったら、費用はかかったが結果的にタイパがよかったと評価される。

(3)は、若者が倍速視聴やファスト映画などを視聴するなどしてコンテンツを消化する側面で、オタクだと認識されたい、そのコンテンツを観た状態になっておきたいという、コンテンツの消化によって生まれるコミュニケーションが目的にある。ある状態になるためにいかに手間を省けるかに焦点が当てられるため、消費をした後に評価されると言うよりは、実際に消費対象を検討するうえでの指標となる。

テレビストリーミング
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「自分が何のオタクか」が人間関係構築に重要

SHIBUYA109 lab.「Z世代のヲタ活に関する意識調査」によると、Z世代の82.1%が「推しがいる/ヲタ活をしている」と回答している。SHIBUYA109 lab.によると、若者の言うオタクという語は、「ファン」と「お金や時間をたくさん費やしているもの」という2つの意味で使われているという。若者は、興味を持っているというモチベーション自体をオタク的と考える。

若者にとって、自身がオタクであると発信することは、自分自身が何者であるか=アイデンティティを発信することと同じ。日常生活におけるプライオリティは高くなり、人間関係の構築においても、「自分が何のオタクか」「自分は何オタクと見られれば円滑なコミュニケーションをとれるのか」ということが重要になるのである。

SNSの普及によってバーチャルなつながりを持つことが大衆化し、仮に現実社会で自身を肯定してくれる人がいなくても、SNS上で自分を理解してくれる人がいればそれでいいと考える者も増えている。ニッチな嗜好しこう、人に言いづらい趣味を持っていても、現実世界の人間関係に理解を求めたり、現実社会の人間に配慮しなくても、ネット上でそのニッチな消費対象を嗜好している他の消費者を見つけ、そのコミュニティに身を置くことが可能なのである。