メタボリックシンドロームと診断されたら、まず何をすればいいのか。栄養学博士の松崎恵理さんと生命科学者で大阪大学大学院の吉森保教授は「糖質のとりすぎをイメージしている人が多いが、栄養素が足りなくてもメタボになることはある。誤った認識で糖質制限ダイエットをすると、かえって体によくない」という――。

※本稿は、吉森保、松崎恵理『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

小太りのスーツの男性のおなか
写真=iStock.com/kuppa_rock
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カット野菜だけを食べるのはおすすめできない

「健康的な食事」「バランスの良い食事」と聞くとどのようなイメージを持たれますか。

おそらく、「野菜をちゃんと食べる」と考える方が多いのではないでしょうか。

実際、私(松崎)の周りでも「野菜をたっぷりとる食事=健康的な食事」と考えている人は少なくありません。

栄養の観点からも、野菜は食べたほうがいいのは間違いありません。

1日の野菜摂取目標量は350グラム以上といわれています。なかなか難しい量と思われるかもしれませんが、汁物の具材に取り入れるなど、ちょっとした食べ方を意識することで、それほど苦労することなく食べることができます。

ただ、野菜だったらなんでもいいというわけでもありません。

スーパーで千切りになったパック詰のキャベツを買ってきて、ひたすら千切りキャベツだけを食べるのは野菜をまったく食べないよりはマシですがあまりおすすめできません。

緑黄色野菜やきのこ類、(野菜ではありませんが)海藻などをかたよりなく、しっかり食べる意識がとても重要です。生野菜にこだわる必要もなく、冷凍の野菜でも問題ありません。最近では、ブロッコリーやオクラなど、さまざまな冷凍野菜がそろっています。

例えば、豆腐や納豆にカットオクラやブロッコリーを細かく切ってのせるなどすれば、たんぱく質と野菜を一緒にとることができます。また、加熱することでかさが減りたくさんの量を食べやすくなったり、味付けの幅も広がります。

野菜ジュースを飲むならトマトを食べるほうがいい

冷凍野菜を活用する、トマトやきゅうりなどをそのまま食べる、野菜を味噌汁みそしるなどにいれる、電子レンジで加熱する、いためる、煮るなどいろいろな方法で食べるようにすると食べる野菜の種類も増えやすくなります。

「野菜は大事ですから、野菜ジュースを飲んでいます」という方も少なくありませんが、これもあまりおすすめできません。

商品によりますが、果物が入っているものは糖質が多めです。また、加熱処理されることで、壊れてしまう栄養素があります。飲みやすくするために食物繊維も取り除かれているものが多いです。β-カロテンやビタミン、ミネラルなど野菜ジュースからもとれる栄養素もありますが、毎日野菜ジュースを飲むよりは、毎日トマトを1つ食べることをおすすめします。

ただ、バランスのよい食事とは、野菜「だけ」をしっかり食べる食事でもありません。

現代の暮らしでは野菜は不足しがちです。厚生労働省が実施している「国民健康・栄養調査」(2019年)によると、どの年代も1日の野菜摂取量の平均値は350グラムに達していません。それに伴う栄養不足が危惧きぐされていることもあり、野菜にばかり意識がいきがちですが、炭水化物やたんぱく質も重要です。

ヒトが生きていくために必要な栄養素がきちんととれる食事こそがバランスの良い食事です。