｢夫の帰りが遅くなっただけで､感情が爆発｣夫婦関係に悩んでカウンセラーを訪れた女性の"意外な原因" ｢自分が自分でないような強い感情｣に見舞われる

夫に感じる怒りや不安は「親に感じていたもの」

Aさんは外ではそんな動揺は決してしませんし、夫以外の他者に対しては怒ることはなく、いつも穏やかに優しく接する人なのです。

だからこそ、家庭内でのAさんの急変は、夫もAさんもどうしていいかわからず、混乱してしまいました。

加えて、Aさんの衝動は意思で止まるようなものではありませんでした。

そのため、Aさんはカウンセリングを受けることにしたのです。

カウンセリングを受ける中で、「夫に感じる怒りや不安は、小さいころに親に感じた感情で、当時はしっかり認知できなかったために今になって出ている」ということを聞いたとき、Aさんの目からなぜか涙があふれ出ました。

「どうして泣いているかわからないけれど、確かに子どものころの怒りや不安や寂しさがある……」と、流れる涙のワケにそっと寄り添うようにしばらく泣き続けられたのです。

このAさんの反応は、一種のフラッシュバックと捉えることができます。

フラッシュバックとはトラウマの症状として、「過去の体験が今まさに起きているかのように蘇ってくる」ものであり、映像に限らず、思考や身体感覚、感情として起きることが非常に多い現象です。

今のAさんや夫が直接的な問題ではない

Aさんの場合、親に対してかつて抱きながら消化されなかった思いが、夫という親と同じような「特別に親しい人」というトリガーによって触発された……と解釈できます。「夫に話を聞いてもらえなかった」「一人の時間が長かった」というような寂しさや不安を感じたとき、“今のAさん”ではなく、“子ども時代の傷”が刺激され、強い衝動となって表れたのです。

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このような場合の、最も大切なポイントは3つです。

1つは、今のAさんや夫が直接的な問題ではないと理解すること。2つ目は、Aさんも夫も、自分自身やお互いを責めないように気をつけることです。そして3つ目は、「昔の心の傷の痛みを、今、出すことができるようになった」と知るということです。

今の何かが原因なのではありません。過去の傷が痛んでいるのです。そのため、手当てすべきは“かつての自分”になります。

Aさんはパートナーの方と共に安全なところに居られるようになったからこそ、過去の痛みを出すことができ始めたのです。

Aさんと夫はそのことを理解し、一緒に対処していこうと話し合いました。