慶應義塾高校は夏の甲子園大会で107年ぶりの優勝を果たした。同校のメンタルコーチを務める吉岡眞司さんは「試合中、部員たちは頻繁に3本の指を立てるポーズを行っていた。ピンチの場面でこのポーズをすることで、前向きな精神状態を作り出すことができた」という――。

※本稿は、吉岡眞司『慶應メンタル 「最高の自分」が成長し続ける脳内革命』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

グラウンド整備をする高校球児と野球ボール
写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです

「体育会系」とは正反対の練習風景

日吉駅の改札を抜けて、すぐ目の前に見えるイチョウ並木道の両側は慶應義塾大学日吉キャンパス。その並木道を登りきると、右手には慶應義塾高等学校(以下、「塾高」)の校舎が見えます。まむし谷と呼ばれる谷底へ向かう階段をくだり、大学の体育会の施設が集まる一帯を越えると、右手に見えるのが塾高野球部のホームグラウンド日吉台野球場です。

練習後に筋トレやミーティングなどが行われる日もありますが、朝から晩まで野球漬けという感じではありません。放課後になると、部員はグラウンドにゆっくりと集まってきます。練習前から皆が笑顔です。

練習が始まってからも彼らの笑顔が絶えることはありません。

強豪野球部の練習と聞いて私たちが想像するような、根性一辺倒な練習風景は見受けられません。体育会的な怒声や、上級生から下級生に対する威圧的な言葉もありません。誰かがミスをしたとしても、ピリピリとした空気になることもありません。

慶應野球部員が実践している5つのこと

「もっとできるよ!」
「なんだよ、最高じゃん!」

練習中、どんな時でも彼らの口からはチームメイトを勇気づける言葉が飛び出してきます。それに応えるように、いいプレーをする選手たち。さらに大きな歓声が上がり、それに刺激を受けた選手がさらにハッスルしたプレーを見せることで、練習がますます白熱します。

塾高の野球部員は5つのことを実践しています。

①最高のパフォーマンスを発揮するためのポジティブな言葉がけ
②脳を落ち着かせるための一点凝視法
③一旦、力を入れてから抜く筋弛緩法
④ネガティブな気持ちを解き放つために視点を変える
⑤脳に自分の最高の状態を想起させるNo.1ポーズ

本稿では、①と⑤について紹介します。