顧客を欺く行為を指示された

そうなると社会人になってからの勤務先に、理不尽なことを(理不尽と知りながらかどうかはわかりませんが)部下や後輩に強要する人がいても、何ら不思議はありません。

民間企業では、発売はしたものの、売れ行きが芳しくなかった製品を社員が買わされることがあります。「管理職は全員、1万円で購入すること」などと指示が出るのです。一緒に働く人たちに、こんなことを強要できる人たちがいるわけです。

私は、もともとその製品の発売に反対だった管理者が、かんかんになって怒っているのを見たことがありますが、その人も仕方なく指示にはしたがっていました。

私自身は、「メイド・イン・某国の製品をメイド・イン・ジャパンとして売ることを内緒にしておくように」との指示を受け、それにしたがったことがあります。

顧客を欺く行為に反発しなかったのですから、言い訳のしようがありませんが、正確に言えば、それを聞いて「よくやるわ」とは思ったものの、すぐに忘れてしまっていました。

日本で生産中止となり、海外でしか製造しなくなった製品の部材が、一定数量日本の工場に余っていて、それを海外の製造拠点へ持っていったのですが、その部材にメイド・イン・ジャパンと印字があったという話でした。

私は、すでに行われたこととして、この話を聞きましたが、もし上司からこの一連の業務をアレンジするよう命令されていたら、かなり悩んだかと思います(私の性格を知っている上司は、私を担当にしなかったとは思いますが)。

メイドインジャパンと書かれた段ボール
写真=iStock.com/champpixs
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理不尽をどう乗り越えていくか

企業活動の中では、理不尽さが明らかに度を越していると感じることもあるでしょう。

パワハラ社長の指示がおかしいと感じても、自分の保身のために、一般社員におかしなことをそのまま実施させる管理者がいることなどは、その例です。

高校などの運動部の指導者による暴力行為も、驚くべきことに今日でもなくなることがありません。他の教員が、それを見て見ぬ振りをするのも、知らん顔をしているのも同じです。

そうした体質、あるいはハラスメント行為と共に成り立っている組織は多いですから、相談者の方のような悩みも生まれてくるのでしょう。

こうした中で、自分がどんなポリシーを持って働いていくのか。それについて悩むのは、多くの人にとって、当然直面することだと言えるでしょう。

20代と若い相談者の方は、こうした問題――すなわち「断ると呼ばれなくなる」ことに恐れをなし、つまずいているわけにはいきません。

違法なことが行われていれば、告発なりの対処をすべきでしょうが、他のことであれば、どうにか乗り越えていくすべを身に付けたいところです。