怒りは怒りのまま存在していい

コーピング行動で怒りを小さくしても、怒りという感情自体は、完全には消えません。絵本では、怒りを無理になくそうとせず、宙に浮かべて放っておく方法をすすめています。

怒りのまっただなかにいるときは、なぜそういう感情が湧いてくるか、本人にも明確にはわからない。なんとか怒りを消そう、追い出そうとしても、人間の感情はそんなに都合よくできていませんから、すぐには切り替わりません。すると、いつまでも怒っている自分が情けなくなり、無力感によって怒りがさらに増し、傷ついて落ち込んでしまいます。

怒りは怒りのまま存在していいのです。そのまま、ぽんと自分の心のなかに置いておく。怒りを爆発させて誰かを攻撃しない限り、怒りが存在し続けていても問題はないわけです。まずは「怒りを感じている自分はだめだ」と、自分を情けなく感じる気持ちや罪悪感を取り払い、気持ちを楽にすることが大切です。

怒りを完全に解消しようとせず、ただ宙に浮かべて置いておく。
怒りを完全に解消しようとせず、ただ宙に浮かべて置いておく。出典=『かいじゅうポポリは こうやって いかりをのりきった』(パイ インターナショナル)

これは強い不安に襲われているときも同じです。不安をなくそうとしても、どんどん次の不安を探しにいってしまいます。でも、心のバランスが回復すると、その問題は解決する必要がないものだったり、そのままでも気にならないことだったりします。ですから、不安が高まっているときは、その不安ごと宙に浮かべておき、気持ちの消耗を防ぐというアプローチが有効なのです。

小さな成功体験を積み重ねていく

コーピング行動や、感情の外在化や言語化といった怒りのコントロールを子どもに促すために、養育者にできることがあるとすれば、子どもが怒ったり、癇癪を起こしたりしたときに「どうしてあなたはそうなの!」という形の切り返し方をしないことです。

「あなたがそんなに怒っているのは、きっと何か理由があるに違いない。何があったの?」と、子どもの気持ちに寄り添って聞いてあげてください。「なんで怒るの!」「やめなさい」などと頭ごなしに言うと、責められるように聞こえたり、叱られたように感じてしまいます。怒りの理由をきちんと聞いて、「なるほど。そんな状況だったら悔しいよ。怒ってしまうのも無理ないよね」と、本人の気持ちに共感してあげると、子どもは少しずつ落ち着いてきます。

お互いにイライラして、スムーズにいかないことも多いと思いますが、「このやりとりを通して、子どもとの信頼関係を築いている」と考えて、小さな成功体験を重ねてほしいと思います。子どもが怒らずに、気持ちをコントロールできたときは「自分で上手に落ち着けるようになったね」とほめてあげてください。子どものなかで自信が積み上がっていきます。