湾岸エリアのマンションが売れ行き好調だ。東日本大震災後初となる都心・湾岸エリアでの新築分譲マンションとして注目された「プラウドタワー東雲キャナルコート」は、11年12月に販売された第一期250戸が即日完売し、第二期も即日完売が続いている。震災後では一期あたり最大の供給数となる320戸を12年4月に販売した「ザ・パークハウス 晴海タワーズ クロノレジデンス」も平均倍率1.2倍、90%の登録申し込みと順調なスタートを切った。

大震災直後は物件供給が完全にストップし、「新規分譲はしばらく難しいのでは?」とも危ぶまれた湾岸マンション市場だが、11年の連休明けごろから早くも客足が戻り始めている。今や震災前をもしのぐほどの盛況ぶりだが、その理由はどこにあるのか。

まずいえるのは、本質的に湾岸エリアが持つ優位性だろう。東雲の物件の最寄り駅である豊洲駅からは有楽町線で銀座一丁目駅まで5分、晴海の物件も最寄り駅の勝どき駅から大江戸線で汐留駅へ5分で行ける。都心への近さという点では、極めて恵まれた条件にある地域だ。都心に近いということは、震災時の帰宅困難度が低いということでもある。それでいて、価格設定は低く抑えられている。豊洲駅周辺では坪単価が300万円を超える物件も珍しくないが、駅徒歩11分の東雲の物件は240万円前後と2割以上安い。また晴海の物件も中央区の立地ながら、70平方メートル台の3LDKが坪単価250万円前後で買える。坪単価300万円超の物件が少なくない城西・城南エリアと比べると、その安さは明白だ。

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“液状化”免れた湾岸エリアの地価は、下げ止まりor上昇傾向

いくら交通利便性が高く、価格が抑えられているとはいえ、震災に対する安全面に不安があるエリアで住宅の人気が高まることは考えにくい。だが、この点についても湾岸エリアは課題をクリアしつつある。というのも、先の大震災で液状化の被害を受けたのは湾岸でも限られた地域で、大半のエリアではほとんど被害がなかったからだ。首都直下地震ではより大きな被害も想定されるが、一般的には湾岸エリアの震災リスクへの懸念は薄らぎつつある。実際、国土交通省が四半期ごとに調査している地価動向では、液状化被害の大きかった海浜幕張や新浦安を除き、湾岸エリアの直近の地価は横ばいないし若干の上昇に転じている。