大谷は高校時代からアメリカ行きを公言していた

さかのぼれば大谷選手は、高校時代に投手として最高時速155キロもの豪速球を投げ、最強の四番打者としての呼び声も高く、すでにメジャーリーグからも声がかかっていたため、本人もアメリカ行きを公言していました。

そのようななか、栗山監督は「大谷君には本当に申し訳ないけれど、指名させていただきます」との有名な予告どおり、ドラフト会議で大谷選手を指名し、見事に交渉権を獲得しました。けれども、当時の大谷選手は「びっくりしたし動揺もした。評価していただいたのは有難いが、アメリカでやりたいという気持ちは変わらない」と語り、日本ハムからの誘いへの辞退の意志を変えず、最初は訪問にも応じなかったそうです。

それでも栗山監督自身による訪問も含む四回もの交渉を経て、結果として大谷選手は日本ハムへの入団を決め、そのニュースにはすべての球団が驚かされることになります。

なぜ栗山監督は、あれほどメジャーリーグ行きに固い意志を示していた大谷選手を説得できたのでしょう?

その秘密はこの卦の教えである「人の集まる場づくりとは誠意ある環境づくり」である点に加え、次の「山雷頤さんらいい」にもピッタリの話がありますので、そちらで続けて謎解きをいたしましょう。

栗山監督が用意した『大谷翔平くん 夢への道しるべ』の中身

山雷頤
食うために正しい努力をする時。
使うより養え、
自分も養い他者も養うことが吉、の意。

栗山監督が自ら臨んだ「高校球児大谷君」の入団の説得で、最終的な決め手になったのは『大谷翔平君 夢への道しるべ~日本スポーツにおける若年期海外進出の考察~』という30ページもの資料です。これは一時期、日本ハムファイターズ公式ホームページで公開されたことで、企業の人材育成担当者の間でも話題となりました。主な内容は次のとおりです。

(1)大谷選手の夢の確認
1.大谷君の希望、達成比較
2.MLB(メジャーリーグベースボール)トップまでの道のり
(2)日本野球と韓国野球、メジャー挑戦の実態
1.日本野球、メジャー選手一覧
2.日本人メジャー選手のキャリア一覧
3.韓国野球、MLB進出状況
4.韓国人メジャー選手中の高卒→メジャー選手の成績
5.韓国人メジャー選手のキャリア一覧
6.日本野球、その他のアマチュア→MLB挑戦者一覧
7.日本・韓国野球、メジャーにおける活躍状況まとめ
(3)日本スポーツにおける競技別海外進出傾向
1.競技別海外進出傾向の違い
2.競技別海外進出の傾向+指標
3.若年期海外進出が向いている競技
4.若年期海外進出理由の競技別適性
(4)世界で戦うための日本人選手の手法
1.日本サッカー海外移籍組のキャリア一覧
2.日本人らしい育成項目
3.「Global(世界の)」でなく「International(多国間の)」で戦う