高齢出産と障害の問題をどう考えるか

これまでの本連載で、40代前半でも出産できる確率は言われている以上に高いということは、お分かりいただけたと思います。ただ、それでも残るのは、産まれてくる子どもに障害が発生する確率が加齢とともに高くなるという不安です。

この点に関しては、正直、生命倫理的に「正解」と言える示唆はできませんが、現時点でできうる対処法について、以下書かせていただきます。

産まれてくる子どもに障害があるかどうか、事前に調べるには、大きくわけて2つの方法があります。それが、着床前診断(PGT)と出生前診断(NIPT)です。似た言葉なので混同しがちですが、この二つは大きく異なり、受診者の心の負担もかなり違います。

まずは、旧来から行われている出生前診断(FISH法)について、説明をいたします。

出生前診断はその名の通り、出産する前の子宮に宿る赤ちゃんについて行う診断となります。従来は子宮内の羊水を採取して検査を行っていました。この方法には様々な問題があります。

まず、検査時期が最早でも妊娠15週からになること。そして検査に3週間ほどの時間がかかること。合わせると、診断結果を知るのは妊娠18週以降となってしまうのです。

そして、かつての手法(FISH法)は、その精度にも問題がありました。また、羊水採取時に受診者は痛みを感じることもあり、同時に、まれに流産に至ることもあったのです。

こうしたことから、昔は高齢出産でも羊水検査を受けないという人が多かったものです。

採血で診断が可能なNIPTが主流

対して、現在主流のNIPTでは通常の血液検査と同様に、母親から採血することで診断が可能です。そのため、羊水採取のような痛みや、流産の可能性もありません。しかも感度(異常の有無を探知する)・特異度(正常かどうかを探知する)ともに非常に高い数値を出しています(※1)

そして、最早で妊娠6週目から受診ができ、診断結果も早ければ1週間で出ます。

検査をして分かる主な染色体疾患は21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトー症候群)ですが、最近の新しいNIPTではこれらの染色体疾患に加えて全ての常染色体を調べたり、微小欠失症候群など、これまで調べることができなかった染色体疾患を確かめることができるようになりました。

つまり、現在は妊娠初期にNIPTで診断を受け、陽性の場合、確定検査(マイクロアレイ法)を行い、障害の有無を把握することは可能といえます。

しかし、ここから先の選択は、妊娠したカップルの判断に任されることになるでしょう。

ちなみに、障害が明らかになった人のうち、妊娠継続した割合は3.4%でした(※2)

40歳で妊娠した場合の障害発生割合は、ダウン症に限っても94人に一人、45歳では24人に一人となります(※3)

圧倒的多数の人は、診断結果に胸を撫でおろすでしょうが、40歳なら94人に一人、45歳なら24人に一人の割合で、苦渋の選択に直面することがあるということです。

40歳前半で出産を考える場合、こうした厳しい現実があることを知り、そして、その時どうするか、まで慎重に考えておく必要があると言えるでしょう。

※1 出生前検査認証制度等運営委員会の追跡調査によると、ダウン症で陽性反応が出た場合の的中率は97.3%(羊水マイクロアレイ法で確定検査を行い、2.7%がダウン症ではなかったとわかる→確定検査後、妊娠継続)となっています。
※2 出生前検査認証制度等運営委員会の追跡調査による。ただし、妊娠継続希望者ははなからこの検査を受けないため、検査後の妊娠継続率は実体以上に低くなっているとも思われる。
※3 梶井正(元山口大学小児科教授)[2011年3月31日]。13トリソミー、18トリソミーは合わせてダウン症の3分の1程度の発生率となる。