NHK番組とYouTubeのコンテンツの違い

お笑い・バラエティーは民放が得意とする分野で、NHKは落語番組くらいしか放送しない。「ゲーム」とは、ゲーム攻略法などを実演してYouTubeで見せるものだ。これも、NHKにはできない。

「料理/グルメ」「アイドル/芸能人」「スポーツ」「ペット/動物」も、芸能事務所に所属しているようなタレントが登場して、それを脚本や構成に基づいて、プロデューサーがスタジオで制作するといったものではない。

作り手も出演者も同一人物で、テーマは自分で決め、演出も自分で考え、カメラやスマホなど簡単な機器で手軽に作っている場合がほとんどだ。

時間という要素もYouTubeとNHKのコンテンツでは大きく異なる。YouTubeはだいたい10分から20分ほどで、30分だと長いとされる。(ただしテレビ局が制作した番組がYouTubeにアップされていることはある)

一方、NHKの番組は、コマーシャルも入れず、45分以上の長さにわたるものがほとんどだ。

NHKには今の若者が求める番組を作れない

視聴者(ユーザー)の規模もまったく違う。YouTube上におびただしいほどアップされるコンテンツは、全体としては累計で数千万人、数億人が見ているが、一つ一つのコンテンツは、多くても10万人単位、1回あたりの閲覧数も数十万程度だ。ほとんどは、万の桁にも達しない。そのような狭い層の限られたターゲットに向けて作られている。

これに対してNHKは、数百万、数千万人に視聴されることを前提として本格的に制作される。これがYouTubeとNHKの番組制作に大きな影響を与えている。

つまり、YouTubeで人気を博しているコンテンツは、NHKがこれまで作ってきたコンテンツとはあらゆる面において対極にあるものだ。NHKがこれまで作ってこず、これからも作りそうにないものだ。

したがって、NHKがネットに移って、これまで作ってきたようなコンテンツを配信しても、ミレニアム世代とZ世代が見たがるとは思えない。そもそも長すぎるし、堅すぎるのだ。

仮にNHKが彼らの好むコンテンツを作ろうとすれば、長くて20分ほどの、きわめて雑多なテーマについての、作りが単純なコンテンツを、無数に作らなければならないが、これはNHKにはできない。NHKは、長い歴史を通じて、テレビというメディアにあったコンテンツ作りをしてきたが、それはYouTubeという新しいメディアにはまったく応用できないのだ。