無能な管理職が居座っている

ところが日本企業の場合はこのような戦い方をしていません。

ビジネスモデルがまったく違うわけです。

いまだに日本の企業は40年前と採用の仕方が変わっていません。

大学を卒業したばかりの専門性も経験もない学生をとりあえずたくさん囲い込み、会社の中でゼロから育てて、いろいろな部署を経験させて村社会を形成し、長くその会社で働き続けてもらうというやり方を続けているのです。

これも戦国時代でたとえると、周辺の農民を非常に少ない報酬で引っ張ってきて、異なる藩や領主のところに移動させずに、特殊な技能や知識も身につけさせずダラダラと働かせるというやり方です。

「新卒一括採用」「終身雇用制」はものをつくればつくるほど売れた戦後の時代であれば問題なかったのです。しかも当時は上にいた優秀な人々が戦争で大量に亡くなってしまったので、ちょっと才覚のある若い人々が仕組みをどんどんつくり上げることができる環境でした。

その他大勢の人はそれに従ってわーと大量に働いていればよかったわけですから、専門性のない働き手がたくさんいてもまったく問題なかったわけです。

ところが今は違います。

全世界にビジネス上のライバルが大量にいるのです。

そして、競争が激しい中で売れるものというのは、非常にユニークで付加価値の高いソフトウェアや高品質の工業製品です。

そういうものをつくれる人は豊富な知識と高いスキルを持たなくてはいけません。要するに、精鋭中の精鋭でなければ無理ということです。

そういった人材を同じ国の中で探していても限界があるので、全世界から募る必要があります。また同時に、超高額の報酬、いい環境、自立性の高い働き方を提供しなければ優秀な人は来てくれません。

日本でDXが進まぬ理由

日本と海外はビジネスモデルだけではなく、デジタル化でも大きく水をあけられています。日本でも最近DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるべきだという主張を聞くようになりましたが、海外では、すでにデジタルは浸透しきっています。

情報技術ネットワーク 世界中のワイヤレスデバイスを接続するためのインターネット
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ビジネスにおいては非効率さや不便さは一番の敵です。それがわかっている欧米の国々では、デジタル化を最優先で進め、ビッグデータを収集することで、効率化を図っています。

また、先ほど紹介したように、欧米ではプロジェクトごとにチームを構築していくスタイルなので、別の人間になっても仕組みが動くようにしなくてはいけません。それが一番安く、最も簡単にできるのがITを利用することなのです。

ところが、日本は少数の優秀な人材を集めるのではなく、スキルの低い大量の人材を集める労働集約型のビジネスモデルなので、効率化よりもとにかく安い労働力を大量に投入することが優先されます。

日本のDX化の現状がいかにお粗末で「負け戦」なのか、また戦国時代でたとえて見てみましょう。

日本企業のような農民集団の中にも、秀吉のように優秀な人間が現れることもあります。しかし、彼らは非常に頭がいいためにさっさと足抜けして浪人になり、よりよい環境に身を置くようになります。

外資系企業はまさに浪人の集団です。浪人とは要するに、スキルがあってどこでも自由に働ける人間です。そういう人たちは海を越えて、外国に行ってしまうのです。

外国の人は幕府や日本国内の藩よりもはるかに高い報酬をくれるので、そっちに行ってしまうのは当たり前です。しかも今や日本は鎖国しているわけではないので、自由に移動ができるのです。