足を骨折しても気づかず、周囲が慌てる

やはり、Aさんと同じく暑さ(熱さ)や寒さ(冷たさ)を感じづらい、という回答が並ぶ。加藤さん曰く「真冬でも薄手の長袖Tシャツ1枚くらいがちょうどいい」という回答はめずらしいものではなく、感覚鈍麻を持つ人は季節外れの服装をして周囲を驚かすことも多いそうだ。しかし、今年のように異例の猛暑のなかで厚着をしていては、もはや、命を脅かしかねない……。

この「感覚鈍麻」だが、危険な症状はほかにも多くみられる。先ほどのアンケートの結果を、もう少しご紹介しよう。

・「(身体を強打しても)アザができ、出血していることにすら気づかないのは日常茶飯事。足を骨折しても『なんか、歩きづらい』としか感じず、周囲の人が慌てているだけだった」(18歳・女性)
・「(骨折や怪我という)衝撃があったことはわかりますが、何も感じません。血が波打っている感覚や細胞が動いているのはわかりますが、衝撃の強さを練習して覚えるしかない。麻酔にかかった状態に近いのかも」(30代後半・性別不明)

ばんそうこう
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空腹を感じないままの食事は義務・強制

ひどい怪我をしているのに、本人はその怪我に気づかない……。これも「感覚鈍麻」の代表的な困りごとのひとつだ。また、彼らは口をそろえて「空腹を感じない」と訴える。

「食べたいと思う物がなければ、食べないままでいい」「空腹を感じず、いつの間にか低血糖に陥っていることがある」「(食事は)必要だから摂らなくてはという、義務感、強制感しか感じない」「『お腹が空いてきた』という感覚がなく、気づくのは我慢ができないほどになってから。腹八分目もわからないので、食べると動けなくなる」のだとか。

これらのほかにも、「体調が悪くなっていることに気づけない」「尿意を感じづらくトイレに行くのを忘れる」「距離感がわからずぶつかってばかりだが、ぶつかっていること自体に気づかない」など、どれも日常生活、ひいては命を脅かすほどの苛烈な体験が、アンケートには連ねられている。