9月10日に日本政府が沖縄・尖閣諸島の購入方針を決定した後、中国各地で反日と銘打った大規模なデモが多発し、被害は日本と縁のある企業・物品に留まらぬ拡大を見せた。中国政府と同国マスメディアは激しい非難を日本に浴びせているが、当然、全中国人の総意ではない。

上海市の日系ファッションブランドのマーケティングアドバイザー、李浩氏は、「中国版ツイッター『微博』上で、デモやその被害の様子が実況され、多くの有名人や知識人をはじめとした全国から、デモの正当性を疑問視する声と、暴力行為を非難する声が上がりました」

一般市民のデモへの批判と不参加の呼び掛けが、次第に拡大していったという。

「『薄書記(薄熙来・今年初めに失脚した保守派の大物)快回来』という横断幕や毛沢東の肖像画から、明らかに保守派の仕業だ!という声が一気に広まった」

では、デモそのものの実態はどうか。上海を拠点に企業のコンサルティングを行うブランド・コアの福留憲治社長は、「小規模なデモの参加者は、地方出身の若者が圧倒的に多く、話題は家賃が高いとか就職先がないとか、日本とは関係のない話ばかり。大規模なデモはいわゆる“官製デモ”。プラカードも叫ぶ内容も統一され、自然発生とは考えにくい」

別の中国ウオッチャーもこう証言する。

「公安(警察)は、デモの参加者を100人ずつグループ分けして管理している。一歩間違えればホンネの反政府運動に転じるため、過激な行動をとる者は写真、ビデオで撮影し、終わってから個別に身元を調査、戸別訪問して警告する。こうして反政府運動の拡大を抑えている」

デモが自然発生でないなら、やるせないのは被害にあった日本料理店などの経営者。多くは中国人なのだ。が、奇妙なのは、なぜか現れる“交渉人”の存在。「怒る店主に対し、『損害賠償するから問題化しないように』などと修繕費の見積もりを出させるなどして“調整”する」(前出ウオッチャー)という。彼らは何者なのか。

「彼らのプロフィールを追うと、軍関係者が多い。今回、反日デモを扇動しているのは人民解放軍のようだ」(同)

仮にそうなら目的は何か。尖閣問題で強硬路線を取るためか、習近平への権力移行の際のトラブル隠ぺいか……いずれにせよ、協調重視の胡錦濤から軍に近い習近平への政権移行が、対日政策に相当な影響を与えているようだ。