新日本製鉄と住友金属工業が10月1日付で合併して誕生する「新日鉄住金」に、スタートから暗雲が垂れ込めている。合併直前の2012年9月中間期決算に、新日鉄、住金が合計約2400億円に達する巨額な特別損失を計上するからだ。

この結果、同期の最終損益は、新日鉄が1550億円、住金は1280億円とともに赤字が拡大する。「合併前に財務リストラを優先し、負の遺産を持ち込まない」(新日鉄幹部)覚悟を示したとはいえ、粗鋼生産で世界第2位メーカーの誕生は、マイナスからの厳しいスタートという現実を突き付けられた。

両社に発生する特別損失は、工場などの収益力が悪化した場合にその資産価値を引き下げるために適用される減損処理を実施するためで、ともに1200億円を計上する。新日鉄が広畑製鉄所(兵庫県姫路市)と堺製鉄所(大阪府堺市)、住金は和歌山製鉄所(和歌山市)を対象とした。その理由は、過剰設備を抱える中国勢が、採算を度外視した安値攻勢でアジア市場になだれ込み、鉄鋼市況が急激に悪化したためだ。中国経済の減速が鮮明になり、中国の鉄鋼業を取り巻く環境は悪化の一途。国内は建築向けの鋼材需要が不振で、欧州債務危機による欧州向け輸出も低迷し、過剰設備と合わせてトリプルパンチに見舞われている。

しかし、国内外の需要縮小にもかかわらず、中国勢は景気下支えを狙って、国営企業を中心に高水準の生産を緩めず、それがアジア市場に流れ込んで市況悪化を招いている。新日鉄、住金に限らず、日本の鉄鋼各社は08年秋のリーマン・ショック以降、輸出に大きくシフトしていたため、アジアの市況悪化の直撃を受けて減損処理を強いられた格好だ。

ただ、合併新会社を待ち受けるのは、アジアの市況悪化だけでない。国内に目を転じても、円高と世界規模での需給緩和から原材料価格が低下し、大口需要家からの鋼材値下げ要請を呑まざるをえない。実際、新日鉄はトヨタ自動車の値下げ要請に、4~9月期で前年から1トン当たり2000円(2%)の値下げを受け入れた。これでは、合併後3年程度で目指す年間1500億円規模の統合効果も、打ち消されかねない。

新日鉄住金は、発足後に中期経営計画を発表する予定だ。重く垂れ込めた暗雲を、そこでどれだけ拭い去れるかに合併の成否も懸かってくる。