日本では法律上、二つ以上の国籍を持つことが認められていない。そのため、多重国籍を認める法改正を求める声もある。評論家の八幡和郎さんは「二重国籍の場合、課される義務は一人分だが、得られる権利は二人分に近く不公正だ。テロや脱税の温床になるリスクも問題で、世界的にも規制する動きが強まっている」という――。
アメリカと日本のパスポート
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蓮舫氏は二重国籍が発覚し、台湾籍から離脱

7月にインターネットテレビ局ABEMAのニュース番組「ABEMA Prime」(アベマプライム)に出演して、二重国籍問題を論じた。

私は2016年に、民進党代表選挙に立候補していた蓮舫参議院議員(当時の本名は日本人としては村田蓮舫、台湾人としては謝蓮舫)が二重国籍であることを発見し糾弾したことがあり、その経緯は『蓮舫「二重国籍」のデタラメ』(飛鳥新社)にまとめている。蓮舫氏ははじめ否定していたが、結局、法律で義務づけられている国籍選択をしていないことを認め、台湾国籍から離脱手続きをした。

このとき、政治的には大問題になったのに、マスメディアはセンシティブだとして、大々的には取り上げなかった。当時、私自身もテレビ番組出演時に、この問題には触れないようにと念を押された。

海外では、一般的に二重国籍が認められていても、政治家となると別であるケースが多い。オーストラリアでは、発覚して議席を失った人もいるし、英国のボリス・ジョンソン元首相も、地位が上がっていく過程で米国籍を放棄した。まして、隠すなどありえない。

二重国籍に反対するのは「不公正」だから

ABEMAの番組では、女性弁護士で、米国籍を現地で取得し、日本国籍を喪失した近藤ユリさんが、二重国籍擁護派を代表していた。帰国しているときに日本旅券が有効期限を迎えたため、更新しようとしたら、外務省から日本国籍を失っていることを告げられ、再発行をしてもらえなかったという。

日本国内では現在、このように外国籍を取得し、自動的に日本国籍を失った人などが、国籍法の規定によって二重国籍が認められないのは憲法違反だとして、複数の民事裁判を起こしている。

しかし私は、むしろ、リベラルな立場から「二重国籍は公正さを欠く」として反対している。自分のフランス生まれの息子が二重国籍になる可能性があったため、自分の問題としても利害得失をよく知っている。本稿では、この主張の根拠を紹介したい。