一人暮らしは脳によい刺激を与えてくれる

一人暮らしをしていれば、日々の生活で頭をフル回転させながら過ごすことになります。必要に迫られて買い物に行って、毎日、料理を作り、食事をして、皿を洗う。ゴミを出しに行き、洗濯をし、掃除をする。このように、家の中にはやることがたくさんあります。そのすべてが、心身、そして脳によい刺激を与えてくれます。

台所
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「認知症になると一人で生活できなくなるのでは」と思う人も多いのですが、不思議なことに、認知症になると、生きるための防御反応が高まります。そのため、「自分で買い物に行って、食事を作らなければ死ぬ」と脳がよく認識しているのか、意欲がなくても買い物には行くし、おなかがいたら料理を作ります。

「計算ができなくなるから、買い物もできなくなるだろう」と不安になる人もいますが、これもいらぬ心配です。認知症になると、自分の身を守るために、より安全に振る舞おうとする傾向が強くなるからです。

計算が間違っていたら恥ずかしいし、店員からとがめられるのも怖いため、お店ではとりあえず、お札を出すようになります。なんでもお札で買い物するようになるので、財布が小銭だらけになります。それでも、上手に買い物をしている証です。

テレビで紹介される事例はレアケースばかり

私は、一人暮らしを無理にお勧めしているわけではありません。家族と一緒にいることが幸せな人もいれば、一人が好きな人もいます。配偶者と死別して一人になる人もいます。「みんな違って、みんないい」のです。

ただし、老人ホームなどへの入居を決めない限り、高年になれば、子どもは巣立ち、親や配偶者と死別し、独居になる可能性は高まります。孤独への不安感が強い人は、孤独の楽しみ方を少しずつ覚えておくとよいのではないでしょうか。予期不安にかられてビクビクするくらいなら、予行演習しておきましょう。

一人旅をする、ウィークリーマンションで1週間暮らしてみるなど、不安に思っていることが、実際にどの程度のものかを体験してみると、「一人でもけっこう楽しめるし、大したことはないな」とわかるはずです。実践こそが予期不安を解消し、心の余裕を増やす最良の方法といえます。

皆さんが、孤独死や認知症を必要以上に怖がるのは、テレビの影響が強いから、と私は考えています。ニュース番組やワイドショーは、人が不安になったり感情的になったりする出来事を取り扱います。なぜなら、視聴率が取れるからです。視聴率が高ければ、スポンサーがつきます。スポンサーの意向を忖度するメディアが、テレビです。テレビを見るならば、ここを十分に理解しておきましょう。

「ニュースになるのはレアケースだけ」――。これが事実です。