>>前回のあらすじ】「自分を変える」「他人を変える」本がベストセラーの常連となったのは1990年代後半から。では、3.11のあと、人間の「心」を扱う本は、どのように変化したのか。

TOPIC-2 自己啓発書は3.11を語ったのか

私のみる限りでは、2011年以後の「心」に関するベストセラーは、大きく2つの傾向に整理することができます。

一つは、読み手自身の不安や怒りを鎮め、悩みを解消し、苦しみを取り除こうとするための書籍です。たとえば、直接「心」という言葉をタイトルに用いているものでは、植西聰『折れない心をつくるたった1つの習慣』(青春出版社、2011)、本田健『読むだけで心がラクになる22の言葉』(フォレスト出版、2012)、長谷部誠『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』(幻冬舎、2011) などがあります。

折れない心をつくるたった1つの習慣』
 植西聰/青春出版社/2011年
読むだけで心がラクになる22の言葉』
 本田健/フォレスト出版/2012年
心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』
 長谷部誠/幻冬舎/2011年

もう少し広く、「心」に関連する言葉を探していくと、石原加受子『「しつこい怒り」が消えてなくなる本』(すばる舎、2011)、小池龍之介『ブッダにならう苦しまない練習 シンプルだから実践できる。今日からもう、悩まない』(小学館、2011)、ロングセラーになっているものとしてはさらに嶋津良智『怒らない技術』(フォレスト出版、2010)などを挙げることができます。ここでは挙げきれませんが、書店に行けばこういった類の書籍は他にも多く見ることができます。

「しつこい怒り」が消えてなくなる本』
 石原加受子/すばる舎/2011年
ブッダにならう苦しまない練習 シンプルだから実践できる。今日からもう、悩まない』
 小池龍之介/小学館/2011年
怒らない技術』
 嶋津良智/フォレスト出版/2010年

もう一つの傾向は、トルステン・ハーフェナー『心を上手に透視する方法』(サンマーク出版、2011)のような、他人の心理を誘導・操作しようとするハウツーを扱う書籍です。最近では、こうした心理誘導・操作技法をテレビでもみることができます。つまり、「メンタリスト」のDaiGoさん のことです。彼は『DaiGoメンタリズム 誰とでも心を通わせることができる7つの法則』(ワニブックス、2011)、『人の心を自由に操る技術 ザ・メンタリズム』(扶桑社、2012)といった書籍も出版しており、双方ともに本の帯やDaiGoさんのオフィシャルブログでは「10万部突破!」と喧伝されています。

心を上手に透視する方法』
 トルステン・ハーフェナー/サンマーク出版/2011年
DaiGoメンタリズム 誰とでも心を通わせることができる7つの法則』
 DaiGo/ワニブックス/2011年
人の心を自由に操る技術 ザ・メンタリズム』
 DaiGo/扶桑社/2012年