和解金は500万円、1000万円と上がっていき…

会社側は裁判序盤に約500万円、後半に約1000万円の和解金を提示してきた。判決日まで残り1カ月を切った頃、約1500万円を提示された時はさすがに心がグラついたが、和解金の30%以上は弁護士費用で吹っ飛ぶ。裁判期間中に借り入れた100万円の借金と、奨学金の残債400万円を返済したい事情もあった。

私は獲得金額の早見表(自作。弁護士費用等を差し引いた時の手取り額)を確認しながら、和解案を蹴飛ばし続けた。和解交渉中、弁護士や裁判官から何度も「譲歩」を求められた私だが、聞く耳を持たなかった。結局、泣く泣く会社側が折れ、白旗を上げた。

ちなみに一般的な不当解雇の解決金は、労働者側が勝利濃厚の場合、「バックペイ+α」が一つの目安になる。しかし、プラスαで慰謝料は認められにくく、仮に認められても50万~100万円ほどが「相場」と言われている。諸々の「運」も味方に付けた私の事例は再現性が低いだろうから、訴訟を検討する際はこちらを参考にしてほしい。

署名する場所を指す男性の手
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「仲間に証言してもらう」は絶対やってはいけない

意外かもしれないが、大人のけんかは子供のけんかと大きく変わらない。言った、言ってない。やった、やってない。水掛け論が基本スタイルであり、これは戦いのステージが裁判になっても同じである。

よって第三者から正当な判断をしてもらうためには自身の主張を裏付ける証拠(あるいは相手の主張や嘘を突き崩す証拠)が必要になってくる。当然、個々の案件により集めるべき証拠は異なるので、これだけは集めておけといったアドバイスは難しい。だが一つだけ、「仲間からの証言を証拠としてカウントしてはいけない」という注意点は声を大にして伝えたい。

労働問題に悩んでいる方は「いざとなったら職場の同僚に証言してもらおう」と考えがちだが、これは完全に愚策である。なぜなら証言は証拠力が低いからだ。証言は嘘がつける。つまり証拠としての信憑性が低い。また、会社側も仲間を使って虚偽の証言で対抗することができる。こうなると第三者は何が何だか分からなくなる。証言以外の物的証拠をどれだけ集めることができるかが、生死をわけるキーポイントであることを強く意識すべきだ。