経験や知識がないと手数料の高さに気づけない

ポイントは、セットになっている投資信託の手数料や信託報酬があまりに高いことです。こういったセット商品の場合、パンフレットで大々的に謳われるのは「定期預金金利3%!」の方で、投資信託の信託報酬については非常に、非常に小さくしか表示されていません。しかも、注意を促すような書き方はしないので、見逃してしまいがちなのです。

つみたてNISAのインデックスファンドには信託報酬が「0.●%」なんて商品がいくらでもありますが、経験や知識がなければ、“メガバンクお勧め商品”の手数料がいかに高いものか、気づくのは容易ではありません。

そもそもこの「信託報酬」とは、購入時一回だけで終わりの「購入手数料」とは異なり、商品を保有している限り発生し続ける経費のようなもの。ざっくり言えば、仮に購入した投資信託の利回りが5%だとしても、信託報酬が年率2%であれば、実質の利回りは3%になるということに。

銀行のカウンターでサービスの案内をする男性
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さらにこの信託報酬は、販売を担う銀行、投資信託の運用会社、信託財産を預かる信託銀行の3社で分けあうシステムになっています。ゆえに、つみたてNISAのような信託報酬が安い商品は、販売サイドにとってうまみゼロ。いくら売れてもつみたてNISAではほとんど利益にならないので、銀行側は手数料が高く取れるセット販売をしないといけない、という仕組みになっているのです……。

お金に「少し余裕がある」けど時間がない人こそ要注意

私の経験上、中山さんのような堅実な公務員の方やエリートの方が、ファイナンシャルプランナー的に「絶対ない」商品を買ってしまうパターンは珍しくありません。なぜかと考えてみると、“メガバンクの行員がおすすめした商品”という大企業神話的安心感や、忙しさのあまり、とりあえず資産運用をすべて丸投げしてしまっているのかな、という気がします。

中山さん含め、「投資信託と定期預金のセット商品」を購入する方は、お金に少しだけ余裕がある。だけど、時間がないんですよね。面談の際、カラリと「銀行で勧められたものを買っているんですけどたいして儲からないもんですね~ハハハ」と、話していたように、大きく目減りもしてないし、安定してお金も入ってきているため、運用状況を気にしてないご様子でした。

たしかに今はまだ、致命的な失敗というわけではありません。ただ、これがどんどん長期的になっていくと、投資した額や期間に対して大した効果もなく、信託報酬の負担が積み重なるだけになるだろうと思い、中山さんにはセット商品の解約後、つみたてNISAを始めることをお勧めしました。