メッセージアプリの通知が悪影響

理由の2つ目は、心理的な弊害です。

学生にスマホを背後に置いて情報処理の作業を行ってもらい、その間にあるメッセージアプリの着信音と、通常のアラーム音を鳴らすという実験を行ったことがあります。

結果、アラーム音には反応がありませんでしたが、アプリの通知音が鳴ったとたんに学生たちの情報処理能力や注意力が低下することが確認されました。

つまり人間は、「自分に対して意味のあるメッセージが届いた」という通知音に対して、強く注意を引かれてしまう傾向があり、それが学習効果を大きく減退させてしまうのです。

ソーシャルメディアアプリでのチャット、SMSの送信
写真=iStock.com/gorodenkoff
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脳はマルチタスクが苦手

3つ目は、「脳はマルチタスクが苦手」ということです。

学生時代に、ラジオや音楽を聴きながら勉強した経験がある人は多いことでしょう。実は、脳にとって、こうした「ながら勉強」はたいへん効率の悪いことなのです。

勉強に集中しているつもりでも、そこにラジオの音声が流れてくると、脳は聞こえてくる言葉の情報処理を自動的にはじめてしまいます。そしてまた学習中の情報処理に戻り……と、目まぐるしく処理をする対象の切り替えを行うため、学習効率は格段に落ちてしまいます。

つまり、私たちはマルチタスクをしているつもりでも、脳としてはシングルタスクを目まぐるしく切り替えているにすぎないのです。そして、切り替えが多くなればなるほど、学習の効果は低下し、ただ脳が疲労していくのみとなってしまいます。