名古屋市の中心部にある大須商店街は、いまでは「日本一元気な商店街」と呼ばれているが、かつては「週末に鬼ごっこやキャッチボールができる」ほどガラガラなシャッター商店街だった。なぜ大須商店街は人気スポットに生まれ変わったのか。フリーライターの伏見学さんがリポートする――。
名古屋市中区にある大須商店街。仁王門通の大きな提灯は商店街のシンボルの一つになっている
筆者撮影
名古屋市中区にある大須商店街。仁王門通の大きな提灯は商店街のシンボルの一つになっている

平日の昼からにぎわう「日本一元気な商店街」の秘密

ある平日の昼下がり――。裏通りからアーケードへと人が吸い込まれていく。商店街に入ると、りんご飴や唐揚げなどを手に闊歩かっぽする若い女性の姿が目につく。別の方向に視線をやれば、アニメ関連のグッズを持った男性が足早に通り過ぎようとしている。

「平日で2万人くらい。土日や祝日にはその倍になりますね」

こう語るのは、大須商店街連盟で会長を務める堀田聖司さん(64)だ。

大須商店街は、名古屋駅から地下鉄を約15分乗り継いだ先にある大須観音駅、あるいは上前津駅が最寄り駅である。具体的には、若宮大通、伏見通、大須通、南大津通という4つの道路に囲まれた東西約700メートル、南北約600メートルのエリアを指す。ここには現在、1200ほどの店がひしめき合っている。

さらに、その中にある8つの通り(万松寺通、大須新天地通、名古屋大須東仁王門通、大須仁王門通、大須観音通、大須門前町通、大須本通、大須赤門通)が大須商店街連盟に所属していて、ここには約450店舗ほどが立ち並ぶ。

今では「お手本」と言われているけど…

店のジャンルも、衣料品や食料品、飲食店、テイクアウト専門のフード、オタク向けのおもちゃ屋、パソコンショップ、メイドカフェなど多種多様だ。「ごった煮」の街と言われる所以である。

ごった煮を象徴するのは、ジャンルの多さだけではない。オーナーや店主も年配者から若者、さらには外国人とさまざまである。

大須は元々、男性客中心の街だったが、10年ほど前からは女性や外国人の客が急増し、老若男女問わず、名古屋を代表する人気スポットになった。

平日、休日を問わず、大須商店街には人があふれている
写真提供=大須商店街連盟
平日、休日を問わず、大須商店街には人があふれている

大須商店街は今、「日本一元気な商店街」と言われている。その名に違わず、毎週何かしらのイベントが開催されている。年間では大小合わせて100件以上にのぼる。中でも目玉と言えるのが「大須夏まつり」と「大須大道町人祭」。後者は2日間でのべ40万人以上を動員する年もある。そんな大須商店街にあやかろうと、全国から視察が後を絶たない。

今でこそまちづくりのお手本となっている大須商店街だが、ご多分に漏れず、かつてはシャッター商店街だった。