戦争長期化で縮小均衡に向かうロシア

冷戦終結後、ロシア経済は海外企業の直接投資を受け入れ、飲食などのサービス、アパレルなど、民間の需要を満たした。しかし、ウクライナ紛争が始まって以降、ロシアから撤退する海外企業は増えた。

ロシアの企業が撤退した企業の店舗を利用して飲食などのサービス業に進出するケースはある。それでも、消費者にとってマクドナルドなど主要先進国のブランドに匹敵する満足感を得ることは難しい。戦闘継続による先行き不透明感の上昇もあり、個人消費の減少傾向は強まった。

また、財政も悪化した。昨冬、欧州が暖冬だったこともあり、天然ガス価格も下落した。原油価格下落に加え、主要先進国はロシア産ウラル原油に上限価格を設定した。そうした影響から、ロシア政府の歳入は減少した。一方、ウクライナでの戦闘が続いているため、戦費支出は増加した。2023年1~4月の累計でも、財政は赤字だった。

民間と政府の支出、投資、輸出のいずれにおいても、ロシア経済が短期間で持ち直しに向かうことは想定しづらい。ロシア経済は縮小均衡に向かっていると考えられる。

頼みの人民元決済も、対ドルで低下傾向

経済の先行き懸念の高まりを背景に、年初来でロシア・ルーブルがドルなどに対して下落した。ルーブル安は、自国に見切りをつけて海外に資金を持ち出し、命の次に大切なお金(資産)を守ろうとする国民の増加を示唆する。

ウクライナ紛争の発生後、米国などはロシアを国際的な資金決済システムである“国際銀行間通信協会(SWIFT)”から排除した。なお、ズベルバンクと、ガスプロムバンクは排除の対象外とされた。現在、ロシア経済は、米ドルを基軸通貨とする国際金融市場から、事実上、隔絶されている。

ロシアは経済運営のために中国との関係強化に動き、人民元建ての決済を増やした。2023年6月にはパキスタンがロシア産の原油を、人民元建てで輸入した。ただ、中国経済の成長率の低下懸念などを背景に人民元も対ドルで下落傾向にある。