ネット書店にのみ込まれ、苦境に…

書店の経営を圧迫している主因として挙げたのが、売り上げの多くを占める雑誌の凋落だ。「出版市場の最盛期である1996年は総販売額の59%にあたる1兆5633億円を占めていたが、2020年には45%に減少し、3分の1の5576億円にまで減少している」と、雑誌市場の急速な収縮が直撃していると分析した。

雑誌が売れなくなった理由として「かつては雑誌上に掲載されていたような情報がインターネット上に無料で公開されるようになったことなど、いわゆるデジタルシフトの影響を色濃く受けている」と断じた。

ソファーに座り、Kindle電子書籍リーダーで書籍を読んでいる女性の手元
写真=iStock.com/Manuta
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さらに、ネット書店のルール破りや図書館との競合にも言及、書店にとって不利な事態が深刻化していると指摘した。

具体的には、書籍・雑誌は全国どこでも同じ価格で手に入れられる著作物再販制度の適用を受けているにもかかわらず、ネット書店では送料無料化や過剰なポイント付与など実質的な値引きが横行していることを問題視。また、官公庁・公共図書館・学校図書館への納入の入札にあたって過度な値引きが行われるケースを批判、とくに公共図書館はベストセラーや新刊本を過度に購入・蔵書し、書店との共存が難しくなっていると訴えた。

「街の本屋さん」を守るために政治が動き出した

書店を取り巻く危機的状況を打開するため、政策提言書はさまざまな方策を列挙し、検討事項として盛り込んだ。

まず、「不公正な競争環境等の是正」。

著作物再販制度を厳守するためネット書店の実質的な値引き販売の実態調査を行うとともに、公共図書館への過度の値引きや蔵書を抑制するルールをつくる。

次に、「デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進」。

流通効率の向上や万引き抑止のため、「制作(出版)→印刷/製本→流通→小売り」のサプライチェーンでICタグの活用を図り、産官連携のモデルプロジェクトを発足させ、政府として助成する。

3つ目が「文化向上・文化保護からの視点」。

書店が文化向上の拠点であるとの認識の下での政策が存在しないことを顧みて、フランスの若年層向け「文化パス」のように、書籍購入を促進するためのクーポンを配布する。

そして、「収益構造の確立・新たな価値創造への支援」。

書店空白エリアへの出店、他業種との複合店化、人材確保策、一時的な運転資金など、包括的な書店支援の枠組みや制度を創設する。

塩谷会長は「法制化するところはしていきたい」と語り、議連幹部は「事態は緊急を要する。できるものから順次、進めていきたい」と力を込める。