仮に不服申立てを行って裁判に訴えても事情は同じである。こういう場合にどうするかと言えば、政治的な解決を目指す他ない。政治的解決とは、決定権限を有する機関あるいは発言力のある機関のしかるべき人物に働きかけることで、「超法規的」な解決策を探るということだ。

問題はどこまで求めるかである。もちろん、何もせずに素直に追加徴税に応じる選択肢もあり得る。政治的(外交的)に働きかけるのは相手の恩を受ける可能性もあるため、それなりの政治的(外交的)コストがかかるからである。それでもあえて働きかけるとすれば、どこまで求めるか。

したたかなロシアに向き合う現実的な方法

最も有利な解決はもちろん、追加徴税を撤回させることだ。しかしこれは現実的でないし、ロシアの税務当局のメンツをつぶすことになりかねない。そんなことをすれば、将来的にもっと大きなコストを支払うことになる可能性がある。

亀山陽司『ロシアの眼から見た日本』(NHK出版新書)
亀山陽司『ロシアの眼から見た日本』(NHK出版新書)

外交的に妥当なラインがどこにあるのかを見極めることが極めて重要となる。この場合であれば、追加徴税を半額にするというのが妥当な線だろう。もちろん、そもそも追加徴税の決定が妥当なのかといった様々な論点があるだろう。様々吟味したうえで、お互いが折れることができないのであれば、痛み分けが最も受け入れやすい解決となる。

難しいのは、相手がどこまでなら受け入れるのかを的確に推測することである。このケースで言えば、ロシア側は圧倒的に有利であり、放っておけばロシア側の主張の通りに追加徴税に応じるしかなくなる。したがってロシアは日本側の働きかけをのらりくらりとかわすこともできるのである。

それにもかかわらず、それなりのハイレベルでの話し合いに応じてくれるとするならば、その時点でロシア側としてはすでに配慮を示していることがわかる。つまり、場合によっては日本側に譲歩する用意があるということだ。

諦めてしまえばそれまで

ここまで読めば、もう答えは見えてくる。あらためて追加徴税撤回を頑なに主張するのは相手側の心を完全に閉ざすであろうし、反対に、もう無理だからと諦めてしまえばそれまでだ。

そういう心理的駆け引きこそが外交交渉の醍醐味だ。ただし、世論に晒され政治的に争点化されてしまえば、もはや駆け引きは不可能である。だから外交の世界で「政治化」というのは、問題を本当に解決したいと考える人からすれば最も忌避すべきものとなる。

反対に、問題を解決したくないのであれば(そういうこともしばしばある!)、政治化することが有効となる。世論が好き勝手に議論して収拾がつかない状態にしてくれるからである。

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