低い線量でもリスクはあるが、発症するかは「確率の問題」

チェルノブイリ原発事故では、核暴走によって核分裂生成物が四方八方に飛び散った。

これは、“核爆弾が爆発したようなもの”だが、当時のソ連政府は核暴走を認めずに消火活動をやらせたために、被曝によって多数の死者が出た。ソ連の当局が発表した死者数は33人だが、情報が非公開だったために実数は定かではない。それぞれの調査によって死者数に10倍以上の開きがあり、ガンや白血病など、放射線由来の長期的な死者数も調査によって大きく違う。当初、ヨーロッパの学者は4000人という数字を使っていたが、その後4万人に膨れ上がっている。

そのチェルノブイリの「10分の1程度」の放射能をばらまいたとされる福島第一原発事故では、放射線の直接的なダメージで死亡した人はゼロである。また放射線の体内蓄積についても、高田教授の調査では、一番多い人で自然放射線から1年間に受ける量の3分の1以下しか検出されていないのだ。

我々は、日常的にさまざまな場所において放射線を浴びているが、医療行為による被曝も、その一例である。

図1はさまざまな医療被曝の例である。100ミリシーベルトの放射線を受けた場合、ガンによる死亡率が0.5%増えると「推定」される。ガンによる死亡率が1万分の1だとすれば、その0.5%、つまり1000万分の5、死亡率が高くなるわけだ。それもほとんど推測の領域の話である。これが100ミリシーベルトの被曝をすることの現実だ。

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図1 医療被曝の例

一般市民の年間線量限度1ミリシーベルトに対して、高田教授の調査で得られた最も高い数値が0.4ミリシーベルト。例えば、胃のX線検診を1回受けると0.6ミリシーベルトなので、それよりもまだ低い。完全に安全圏の範囲の数値であることが理解できるだろう。

低レベルの被曝は長い潜伏期間を経てガンを発生させる。放射線によって細胞のDNA分子が傷つき、それがガン化して増殖すればガンは発症する。しかし傷ついた細胞が死滅して、体外に排泄されることもある。この場合、ガンは発症しない。

たった一つの細胞が傷ついても運悪くガンが発症することもあるわけで、その意味ではどんな低い線量でもリスクはあるが、その後発症するかどうかは「確率の問題」なのである。

その意味では、放射線のリスクは、タバコや酒と同じようにとらえるのが正しい。タバコ(へビースモーカーの場合)は寿命を6年短縮させ、肥満は3年と言われている。しかし、自然放射能はわずか8日。今のところ福島第一では、それよりも低い被曝ケースしか観察されていないのである。

親がヘビースモーカーの家庭なら、学校の校庭を削ることより、子供の受動喫煙のリスクを心配したほうがいい。