2012年8月22日(水)

放射能汚染は、原発事故よりCT検査が危ない

大前研一の日本のカラクリ

PRESIDENT 2012年9月3日号

著者
大前 研一 おおまえ・けんいち
ビジネス・ブレークスルー大学学長

大前 研一

1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。現在、自ら立ち上げたビジネス・ブレークスルー大学院大学学長。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。 >>大前経営塾

執筆記事一覧

ビジネス・ブレークスルー大学学長 大前研一/小川 剛=構成 ライヴ・アート=図版作成
1
nextpage

「除染」は、最終的にはすべて国民負担になる

福島第一原発の事故後、世界中に“放射能恐怖症”が広がったが、今や事故当事国である日本の原発、放射能アレルギーは私の理解を超えて、異常な状況が続いている。その象徴といえるのが、放射性物質を取り除く除染問題だ。

今、除染の限界線量(閾値)はどんどん下がり、逆に除染費用はうなぎ上りに上昇している。こうなると巨大な除染産業が勃興してきて、かつての自民党政治時代の砂防会館に象徴される「砂防ダム」のように、ホットスポットを見つけてきては予算を分捕る「利権化」が起きてくる。その利権の強い味方になっているのは、乳飲み子を抱えた母親であり、「校庭で遊べない子供が可哀そう」などと騒ぐ親へのインタビューを得意とするマスメディアである。

実をいえば、広島、長崎での被爆経験を持つ日本は、放射線が人体に与える影響に関するデータを、世界で一番持っている。しかし、そのデータが有効に使われることなく、正確な知識も広まらずに、ただ単に「放射線は恐ろしい」というイメージばかりが先行し、神経質な対応を重ねているのが現状だ。

このままいけば福島県全域の学校を除染しろという話になり、そうなればこれまでに東京電力が補償した費用の何倍ものコストがかかる。それらは最終的には、すべて国民負担になる。

東京電力は国営化され、税金か値上げ以外に経営を維持する仕掛けがないからである。放射能に対する過剰反応を正さない限り、いくら消費税増税で歳入不足を補っても、歳出は無限に増えていく。

今の日本に必要なのは、放射線の障害が出る閾値、限界被曝量に関する具体的な議論を始めることである。

「広島の黒い雨」や「チェルノブイリ原発事故」の研究を長年行ってきた札幌医大の高田純教授は、原発事故発生後、南相馬、郡山、いわき、福島、二本松の福島全県で、新生児から成人まで、87人の全身のセシウム放射能を検査した。そのうちの83%は検出限界値以下(キログラム当たり10ベクレル以下)だった。その他17%からセシウムが検出されたが、最大の人で体重キログラム当たり165ベクレル。年間線量を推定すると0.4ミリシーベルトで、全くの安全範囲で、自然放射線による内部被曝の世界の年間線量平均値である1.3ミリシーベルトよりも少ないという。

PickUp

「大前研一の日本のカラクリ」 バックナンバー一覧 »
関連記事一覧 »
キーワード