救急車の利用は、早く有料化すべき
少子高齢化の進行とともに日本の医療費は増大の一途をたどっている。2009年度の国民医療費は36兆円を突破し、前年度比3.4%増は、過去最高の伸び率である。特に70歳以上の医療費の伸びが顕著で、1997年度と比較すると、65歳未満人口における総医療費は、約15兆4000億円から約16兆1000億円へと7000億円増加した。そして70~74歳における総医療費は、約3兆2000億円から約4兆3000億円へ増加し、1兆1000億円も増加している。さらに75歳以上に至っては4兆5000億円もの大幅増だ。自民党政権時代、暫定的に1割に据え置いた70~74歳の医療費の窓口負担だが、この春先、岡田克也副総理が「2割に戻させていただきたい」と語っている。つまり、13年度以降に引き上げるべきとの認識を示したのだ。これは、選挙前というタイミングを考えれば、バカ正直な答えだが、まさに“正論”である。
世界的に見ても、日本ほど医療費が無限に膨らんでいく仕掛けになっている国はない。スウェーデンやデンマークなどの北欧諸国においては高齢者医療費は無料だけでなく、あらゆる世代の医療費負担がゼロで、すべて国の負担で面倒を見ている。しかしながら、医療費が財政を圧迫するような状況にはなっていない。
これはなぜなのか。高負担高福祉で税金が高いこと以外に、もう一つ、制度的な理由があり、国として「病気の定義」をしているからだ。北欧では体調を悪くしても、いきなり病院は診てくれない。まず病院に電話をすると、症状を細かく聞かれる。そのうえで、「それなら病気です」という判断がなされなければ病院の診察予約は取れない。
たとえば風邪程度の症状だと、「その場合はこの薬を飲んでください」とOTC薬(医師の処方なしに薬局で買える一般医薬品)を紹介されて終わりである。
「インフルエンザかもしれない」と疑われて、ようやく病院診察のアポが取れる。このように、病気を定義することで、厳格に入場制限している。
日本の場合、これがほとんどノーチェックだから、何かといって病院に駆け込んでくる。日曜日のハイキングで足がむくんだぐらいでもご丁寧に診察して湿布を貼ってくれるし、鼻風邪程度でも病院できちんと薬を処方してくれる。
だから現状として、病院は暇を持て余した高齢者にとって格好のたまり場と化して、病気を治すより世間話をするために病院通いしている人もいる。そして農村地帯では稲刈りのシーズンが忙しくて年寄りの面倒が見きれないから病院に入れてしまえと「農繁期入院」まである。病院を介護施設代わりに使っているのだ。