月給の3分の2の傷病手当金は1年6カ月しかもらえない

夫は1年ほど前まで家電メーカーの営業職として働いていました。職場の内外で人間関係によるストレスを感じることが多く、さらに仕事の拘束時間が長いということもあり、次第に体調を崩しがちになっていきました。

夫は「自分が働いて家族を支えなければならない」という強い責任感を持ち、体調が優れない中、無理をして仕事を続けていたそうです。しかし、そのような状況は長くは続きませんでした。

ある朝、会社に向かおうとした夫は自宅の玄関から一歩も動くことができなくなってしまったのです。そして「このまま消えてなくなりたい」といった思いが湧きおこりました。その瞬間、全身からサーッと血の気が引くような感覚に襲われ、体に力が入らなくなり、その場にしゃがみこんでしまいました。その日は会社を休んで様子を見ましたが、翌日もその次の日もやはり玄関から一歩も外に出ることができませんでした。

孤独と強い不安を感じている人のイラスト
写真=iStock.com/Elena Medvedeva
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会社に行けなくなったため、有給休暇を利用してしばらく療養をしていました。しかし一向に良くなる気配はありません。夫は一日中思いつめたような暗い表情をしていたので、心配した妻は夫を心療内科に連れていきました。医師からは適応障害と診断され、仕事をしばらく休むようアドバイスを受けました。夫は医師の指示に従い、引き続き自宅で療養することに。有給休暇をすべて消化しても状況が改善しなかったため、傷病手当金を受給することにしました。

傷病手当金とは、病気やけがのために会社を休み、会社から十分な報酬(給与など)が受けられない場合に支給されるものです。傷病手当金の額はおよそ月給の3分の2になります(支給期間は、令和4年1月より支給開始日から通算して1年6カ月)。

傷病手当金を受給して1年ほど休職をしていましたが、職場復帰のめどが立たず、会社にも迷惑がかかってしまうという思いもあり、自ら会社に退職を申し出ました。

夫は退職後も一日中家の中で過ごしています。担当医からは、少しでも社会とつながるようにとデイケア(精神障害のある方が、日常生活の改善や社会復帰を目的とした通所型リハビリテーション)に参加するようアドバイスを受けています。

しかし、夫は気持ちが上向かないようで、デイケアには一度も参加していません。3週間に1度の通院以外、外出もしておらず、社会から遠ざかった生活を続けています。夫は社会との接点も持たず、まるでひきこもりのような状況に陥ってしまったようなのです。

1年以上休職をしても症状は改善せずにいる。そのようなこともあり、最近になって適応障害からうつ病に診断名が変更になりました。